『バード・オブ・パラダイス』(2)
■6月はK2HD CDで発売中の渡辺貞夫のアルバムを紹介します。
この 『バード・オブ・パラダイス/渡辺貞夫 ウィズ・ザ・グレイト・ジャズ・トリオ』 の聴きどころは渡辺貞夫のすばらしいビ・バップ・プレイだが、「グレイト・ジャズ・トリオ」<ハンク・ジョーンズ(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)、トニー・ウィリアムス(ドラムス)>のバックアップがそれをさらにすばらしいものにしたことは間違いない。
グレイト・ジャズ・トリオは、その後メンバー・チェンジを繰り返し、実質ハンク・ジョーンズ・トリオとして現在も活動を続けているが、渡辺貞夫がいなければこのトリオの活動は継続されてはこなかっただろう。
グレイト・ジャズ・トリオは75年の春に、トニー・ウィリアムスの呼びかけで編成され、わずか1週間だけクラブに出演した。まさに「グレイト」な、夢の顔合わせはすばらしい演奏だったにもかかわらず、多忙な3人ゆえにその演奏を再び聴くことはできなかった。だが、76年5月にこのトリオは渡辺貞夫の『アイム・オールド・ファッション』の録音で顔を揃えることになる。同じメンバーでさらに77年5月に『バード・オブ・パラダイス』も録音する。トリオは再会、再々会で意気投合、渡辺貞夫とのコンビネーションも2度目となれば単なるスタジオ・セッションではない空気が生まれ、結果すばらしい演奏となった。
このセッションをきっかけについに、グレイト・ジャズ・トリオはレギュラー・グループとして活動を開始、77年12月にライヴ盤が録音され、その『ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』は大きなセンセーションを巻き起こしたのだった。10年以上スタジオでの活動を中心にしていた名手ハンク・ジョーンズは、グレイト・ジャズ・トリオの活動から再び表舞台で脚光を浴び、その後のめざましい活躍ぶりはご存知のとおり。『バード・オブ・パラダイス』がなければ「グレイト・ジャズ・トリオ」の活動はなかったのだ。
写真:『バード・オブ・パラダイス/渡辺貞夫 ウィズ・ザ・グレイト・ジャズ・トリオ』(ビクターエンタテインメント)