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Victor Jazz Cafe - ビクタージャズカフェ

Jazzアルバムの楽しみ方 〜名盤の聴きどころ

2006-06-11

『カリフォルニア・シャワー』(2)

■6月はK2HD CDで発売中の渡辺貞夫のアルバムを紹介します。

『カリフォルニア・シャワー/渡辺貞夫』 には多くの魅力があるが、そのひとつはバック・ミュージシャンのすばらしい演奏だ。ここではデイヴ・グルーシン(キーボード/アレンジ)、リー・リトナー(ギター)、チャック・レイニー(ベース)、ハーヴィー・メイソン(ドラムス)、パウリーニョ・ダ・コスタ(パーカッション)というクロスオーヴァー/フュージョンを代表する面々がバックを固めている。

グルーシンは60年代後半からジャズや映画音楽(あの『卒業』も)などさまざまな分野でアレンジャーとして活動、70年代半ばには西海岸を中心にクロスオーヴァー・キーボーディストの代表格のひとりとして目されるようになっていた。76年には、後に(トップ・フュージョン・レーベルの)GRPレコードとなるGRPプロダクションを立ち上げ、プロデュース業も積極的に行なっていた。

他の共演者はほぼグルーシン人脈で、『カリフォルニア・シャワー』の78年までに、グルーシンはリトナーのそれまでの全リーダー作3枚、メイソンの全リーダー2枚にアレンジやキーボードで参加するという仲(この後もこの3人の共演は一層増える)であった。『カリフォルニア・シャワー』は、いわば渡辺貞夫ウィズ・デイヴ・グルーシン・グループといえる編成である。もうベーシックなサウンドは出来ているのだ。

フュージョンは「グループ・サウンド」であるので、この緊密な関係は非常に重要だ。この時期多くの「オールスター・スタジオ・セッション」のフュージョン・アルバムが作られたが、純ジャズとは違って、その場限りのセッションでは音楽的にいい結果が出せていないものもよく見受けられた。また、このように既存のグループをそのままバックにするとリーダーの存在が薄くなってしまう危険性もはらむわけだが、ここでは完全に渡辺貞夫の音楽になっているところがすばらしい。

渡辺貞夫とグルーシンの共演は、ほぼ同じメンバーによるこの前作『マイ・ディア・ライフ』から始まったが、編曲面で全面的にグルーシンと協力したのはこの『カリフォルニア・シャワー』からだった。このメンバーを起用するタイミングも最良。渡辺貞夫もグルーシンも、いい音楽には何が必要なのかしっかりとわかっているのだ。

グルーシンとの共演はアルバム発表後の全国ツアー、『モーニング・アイランド』を経て、80年の『ハウズ・エヴリシング』(ジャズでは初めての日本武道館ライヴ盤)でひと区切りとなる。グルーシンは渡辺貞夫のフュージョンを確立させた最良のパートナーのひとりだったのだ。グルーシンがいなければ「フュージョンのナベサダ」はこれほど広くは受け入れられなかったに違いない。その出発点が『カリフォルニア・シャワー』なのである。

写真:『カリフォルニア・シャワー/渡辺貞夫』(ビクターエンタテインメント)


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