『ナベサダ&チャーリー/渡辺貞夫フィーチャリング・チャーリー・マリアーノ』
■7月はK2HD CDで発売中の渡辺貞夫のアルバムを紹介します。
『ナベサダ&チャーリー/渡辺貞夫フィーチャリング・チャーリー・マリアーノ』 は、その名のとおり渡辺貞夫とチャーリー・マリアーノの共演盤。昔からアルト・サックス・プレイヤーがふたり集まれば、チャーリー・パーカーの曲を題材にビ・バップ・バトルをすると相場は決まっているので、このアルバムもそうだろうと思っている人は多いはず。だが、バリバリのビ・バッパーである渡辺とマリアーノであるにもかかわらず、ここでは違うのだ。ふたりは競うことなくそれぞれのソロを聴かせる。
チャーリー・マリアーノは1923年ボストン生まれ。渡辺貞夫(33年生まれ)がバークリー音大留学中(62〜65年)は彼の先生であった人だ。ということもあって、このアルバムのふたりのアルト・プレイはそっくりである。また、マリアーノは59年に秋吉敏子と結婚(のちに離婚)し、双頭クァルテットで数年活動していたこともあり日本とはなじみ深いプレイヤーである。この録音時、マリアーノは渡辺宅に長期間滞在し渡辺との親交をさらに深め、日本のジャズマンにも多大な影響を与えたといわれる。
さてアルバムだが、渡辺貞夫はアルトのほかフルートも多く演奏し、渡辺が休みのトラックまである。このアルバムはマリアーノを広く紹介するという狙いがあったのだろうか、と思って完全復刻の紙ジャケを見れば、裏面は全面がマリアーノの写真だし、タイトルも現在とは違って「チャーリー・マリアーノと渡辺貞夫」となっているではないか。これはマリアーノがメインのアルバムなのだ。想像するに、自分が教えたスタイルで、10歳下の教え子とバトルはやりたくなかった、ということなのかな。
写真:『ナベサダ&チャーリー/渡辺貞夫フィーチャリング・チャーリー・マリアーノ』(ビクターエンタテインメント)