『バード・オブ・パラダイス』(1)
■6月はK2HD CDで発売中の渡辺貞夫のアルバムを紹介します。
渡辺貞夫は1933年生まれ。日本を代表するアルト・サックス奏者である。今年で音楽活動歴は55年。ビ・バップから、ブラジル音楽、フュージョンまで幅広く手掛けてきた。この 『バード・オブ・パラダイス/渡辺貞夫 ウィズ・ザ・グレイト・ジャズ・トリオ』 は、ストレートなモダン・ジャズ・アルバムで、ビ・バップの巨人、チャーリー・パーカーの愛奏曲集となっている。
渡辺貞夫は「フュージョン」のイメージが強いが、多くのフュージョン・アルバムをリリースする一方でまた多くのジャズ・アルバムをリリースしてきた。このアルバムが録音された77年のジャズ界は、フュージョンまっただ中の時代。渡辺貞夫自身も翌78年にフュージョン・アルバム『カリフォルニア・シャワー』を大ヒットさせるが、実は録音順とは逆に『バード・オブ・パラダイス』の発売はそのヒットの後だった。というわけで、『カリフォルニア〜』でファンになった人にはガラリと変わった意外な1枚に、古くからのファンには安心の(?)1枚となった。
時代の状況はともかく、これは渡辺貞夫のすばらしいモダン・ジャズ・アルバムの1枚である。聴きどころはなんといっても「グレイト・ジャズ・トリオ」<ハンク・ジョーンズ(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)、トニー・ウィリアムス(ドラムス)>との共演。同じメンバーで『アイム・オールド・ファッション/渡辺貞夫』をこの1年前に録音しているので続編ということになるのだが、勢いがまるで違って聴こえるのだ。
ここでは渡辺貞夫の最大のアイドルであろうチャーリー・パーカーにテーマを絞ってのセッション、さらにハンク・ジョーンズはかつてパーカーとも共演しているだけに、渡辺貞夫も奮い立ったに違いない。結果、数あるパーカー愛奏曲集の中でも出色の出来栄えとなった。
写真:『バード・オブ・パラダイス/渡辺貞夫 ウィズ・ザ・グレイト・ジャズ・トリオ』(ビクターエンタテインメント)