『サキソフォン・コロッサス』その1
■5月はK2HD CDで発売中のソニー・ロリンズのアルバムを紹介します。
モダン・ジャズの名盤中の名盤の誉れ高いソニー・ロリンズの 『サキソフォン・コロッサス』 は、どんなジャズ入門書にも必ず紹介されている、いわば「ジャズの常識」の1枚だ。録音から50年、このアルバムの何がそんなに愛されているのか。まず、ロリンズの「あふれ出る歌心」。そして共演者の的確でバランスのいい演奏というところか。
「歌心」は聴けばすぐにわかる。アップテンポの「セント・トーマス」でも、バラードの「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」でもサックスはまるで声で歌っているようだ。これはこのアルバムでなくともロリンズの特徴として上げられること。だからこのアルバムを特徴付けているのはむしろ次の、共演者の演奏である。ロリンズは時にバックの演奏を無視したかのように「暴走」することがあり、ライヴ盤では明らかにそんなシーンもあったりする。
ここでのバックはトミー・フラナガン(ピアノ)、ダグラス・ワトキンス(ベース)、マックス・ローチ(ドラムス)の3人。いずれも数々の名盤で知られる名プレイヤーだが、特にローチはこの時期クリフォード・ブラウン(トランペット)とのクインテットで大活躍中で絶好調の時期。的確かつ、積極的なプッシュがロリンズを熱くしているのは明白。ローチのシンバルに耳の照準を絞ると、ローチのアルバムとも思えるほど全体をリードしている。そしてフラナガンもワトキンスの演奏にもそう感じられるところがある。つまり全員がひとつの方向に向かっていると感じられるのだ。次回からはそのへんを詳しく聴いていこう。
ところで、たいへんたくさんあるジャズ・アルバムで、略称で呼ばれているジャズ・アルバムはこれぐらい。もちろんCD店でも「ロリンズの『サキ・コロ』」で通る。長年の人気をうかがわせる事実だ。
写真:『サキソフォン・コロッサス/ソニー・ロリンズ』(ビクターエンタテインメント)