『ポートレイト・イン・ジャズ』 その3
■今月はK2HD CDで発売中のビル・エヴァンスのアルバムを紹介します。
「名盤」と呼ばれるアルバムは、いつの時代にあってもその魅力は変わらない。比較の問題ではなく、絶対的なすばらしさがあるということ。
『ポートレイト・イン・ジャズ』は、まさにそんな1枚だが、今回はちょっと見方を変えてみよう。
『ポートレイト〜』が録音されたのは1959年12月。同じ年に録音されたアルバムをざっと書き出すと…
マイルス・デイヴィス『カインド・オブ・ブルー』/ジョン・コルトレーン『コルトレーン・ジャズ』/アート・ブレイキー『パリ・コンサート』/ジョージ・ラッセル『ジャズ・イン・ザ・スペース・エイジ』/サン・ラ『ウィ・トラヴェル・ザ・スペースウェイズ』/オーネット・コールマン『チェンジ・オブ・ザ・センチュリー』/ディジー・ガレスピー『コペンハーゲン・コンサート』/デューク・エリントン『ライヴ・イン・パリ』/モダン・ジャズ・クァルテット『サード・ストリーム・ミュージック』/チェット・ベイカー『イン・ミラノ』/『ウェス・モンゴメリー・トリオ』/キャノンボール・アダレイ『イン・サンフランシスコ』/セロニアス・モンク『アローン・イン・サンフランシスコ』などなど。
マイルスがジャズ史に残るアルバム(これにはエヴァンスも参加)を録音、アート・ブレイキーをはじめ多くのジャズマンのヨーロッパ進出、オーネット・コールマン、サン・ラら前衛派の台頭、キャノンボールのファンキー路線など、モダン・ジャズの激動の1年が見えてくる。この中にけっこう地味な『ポートレイト・イン・ジャズ』が並ぶわけだが、どうだろう、もしかすると当時はまったく目立っていなかったりして?
写真:『ポートレイト・イン・ジャズ/ビル・エヴァンス』(ビクターエンタテインメント)