ビル・エヴァンス『ニュー・ジャズ・コンセプションズ』 その2
■今月はK2HD CDで発売中のビル・エヴァンスのアルバムを紹介します。
今回は『ニュー・ジャズ・コンセプション』の周辺事情を解説しよう。ネタ元はこのアルバムのプロデューサー、オーリン・キープニューズの回想記である。ビクターエンタテインメントからリリースされているエヴァンスのボックス・セット『コンプリート・リヴァーサイド・レコーディングス』に収載されている。
録音は1956年9月27日。エヴァンスは27歳でクラリネットのトニー・スコットのグループに在籍中だった。エヴァンスの友人であるギタリストのマンデル・ロウの紹介でプロデューサーはデモ・テープを聴き、直接にはエヴァンスの演奏は聴かずに録音を決定したという。だが当のエヴァンスは乗り気ではなく、録音の説得にずいぶん時間をかけたというのがおもしろい。
共演者と演奏曲目はすべてエヴァンスが決め、予算の都合でトリオ録音を先に済ませ、メンバーを帰してからソロ録音をしたという。一部に熱狂的なファンがいたというが、最初の1年間のレコード売上は800枚だったという。当時リヴァーサイドはまだ新興弱小レーベルだったが、それでもこの数字は低いものだったらしい。
当人乗り気薄しかも低予算録音、おまけに芳しくない売上。しかし、エヴァンスの才能とその発展を予見したプロデューサーの耳は実に正しかった。プロデューサーの<今だから言える>裏話は実はこれが言いたかったのかな。
『ニュー・ジャズ・コンセプションズ/ビル・エヴァンス』
(ビクターエンタテインメント)