『サキソフォン・コロッサス』その3
■5月はK2HD CDで発売中のソニー・ロリンズのアルバムを紹介します。
ソニー・ロリンズの 『サキソフォン・コロッサス』 は、ロリンズの代表作かつモダン・ジャズの大名盤だ。ロリンズの名演はもちろんだが、バックの演奏もすばらしい。今回はバックのトミー・フラナガン(ピアノ)に注目してみよう。
誰が言ったか「名盤請負人」と呼ばれるほどフラナガン参加のアルバムには、後に「名盤」として聴き継がれているものが多い。『サキ・コロ』もその1枚だが、当時ロリンズは26歳。さて、フラナガンは? 意外なことにフラナガンもロリンズと同じ30年生まれだった。
デトロイトで活動していたフラナガンがニューヨークへ出てきたのは56年のこと。つまり『サキ・コロ』はフラナガンのニューヨーク・デビュー間もない頃の録音なのである。後の活動のイメージからか、『サキ・コロ』は若いロリンズをベテランがバックアップというイメージがあるが、ダグ・ワトキンス(ベース)はさらに若く22歳。32歳のマックス・ローチ(ドラム)以外はみんな若かったのだ。
トミ・フラは56年から57年の2年間に約40枚のアルバムに参加している。その後さらに増え、60年には年間40枚以上というペースになっている。「名盤請負人」は働き者だ。見方を変えれば多数の「セッション請負人」としての活動が、結果として「名盤請負人」となったというようにも考えられる。もちろん参加アルバム数も実力のうちだが。
なお、フラナガンの人気アルバムかつファースト・アルバムの『オーヴァーシーズ』が録音されるのは『サキ・コロ』の翌年。まだまだ駆け出し時代だったのだ。
写真:『サキソフォン・コロッサス/ソニー・ロリンズ』(ビクターエンタテインメント)