スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト『ゲッツ/ジルベルト』
今月はアントニオ・カルロス・ジョビンの参加アルバムを紹介していきます。
作曲家/ピアニスト/ヴォーカリスト/ギタリストのアントニオ・カルロス・ジョビン。1950年代末にジョアン・ジルベルトらとボサ・ノヴァを「発明」し、世界中に広めた。その作品は世界中で愛され続け、ジャズ・スタンダードとしても多くの曲が演奏され続けている。作品の質、独自性、人気からいってジョビンは20世紀を代表する作曲家のひとりと言ってよいだろう。94年12月に死去。ということで今月はジョビンをとり上げる。冬らしくない? でも南半球は夏ということで。
さて、数あるジョビンの曲の中で最も有名なのは、なんといっても「イパネマの娘」★だろう。オリジナルはスタン・ゲッツ(テナー・サックス)とジョアン・ジルベルト(ヴォーカルとギター)の共演盤『ゲッツ/ジルベルト』に収録されている。ジョビンはそこにピアノで参加している。
ゲッツはこのアルバムの1年前にすでに『ジャズ・サンバ』というボサ・ノヴァ・アルバムをリリースしていたりと、ブームの下地は出来上がっていたところで、「イパネマの娘」がアメリカで大ヒット。ボサ・ノヴァという音楽が世界中でブレイクすることになる。ボサ・ノヴァの発祥とスタン・ゲッツは直接関係ないのだが、このアルバムのためにジャズ・ファンの間では「ゲッツ=ボサ・ノヴァ」のイメージが強く定着している。
だがアルバムを聴けばわかるように、実はゲッツの方がゲスト・ソロイストといった感じで、音楽の主役はジルベルトであり、ジョビンである。アルバムを作ったのがVerveというジャズ系レーベルだったため、新しいジャズとして聴かれたことも当時のヒットに大きく関係しているだろうが、これ以降多くのジャズマンがボサ・ノヴァ、つまりジョビンの曲をレパートリーにとり入れていった。
『ゲッツ/ジルベルト』1963年録音(ユニバーサル)