*今月はトミー・フラナガン(ピアノ)参加アルバムを特集します
ジョン・コルトレーン(テナー・サックス)作曲の「ジャイアント・ステップス」★は、当時から現在もアドリブ高難度の筆頭に上げられる曲である。1959年録音の同名アルバムの冒頭で、コルトレーンはこの曲をものすごい勢いで吹きまくり、その難しいコード・チェンジを音で埋め尽くした。その圧倒的な演奏は「シーツ・オブ・サウンド」(「シーツ・オブ・レイン」は土砂降りの雨のこと。音の土砂降りのイメージか)と呼ばれ、コルトレーンの代表的なスタイルのひとつとして聴き継がれている。
さて、そのようなハードなイメージの『ジャイアント・ステップス』にもトミー・フラナガンはいた。名人だけにソツなくこなしているが、この「ジャイアント・ステップス」のソロだけはいつもの調子が出ていない。「この難しいチェンジはあらかじめ知らされていたが、まさかこんなに速いテンポでやるとは思わなかった」とフラナガンは述懐する。やはり難曲なのだ。
そして後日、マジメなフラナガンはこのことが忘れられなかったのか、82年に自身のアルバム、その名も『ジャイアント・ステップス』でこの曲を再演。すばらしい演奏で喝采を浴び、20数年を経てモヤモヤをスッキリさせた(?)。
実は当時はコルトレーンもその場でバリバリ吹けたわけではなかったようなのだ。というのは、後年発表されたCDの追加トラックに同曲の別メンバーによるテイクがあり、それを聴くと、フラナガンのセッションで吹かれたフレーズはかなり用意されたものだったことがうかがえるのだった(もちろん、それでもあの演奏の圧倒的なすばらしさは変わらないが)。と考えると、フラナガンの力量はやはりすばらしいものだと思うのだ。
『ジャイアント・ステップス/ジョン・コルトレーン』1959年(Atlantic/イーストウエスト・ジャパン)
★名曲の項もご覧ください。
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