『シングス・ザ・コール・ポーター・ソング・ブック/エラ・フィッツジェラルド』
アメリカ・ポピュラー・ミュージックの基礎を作った大作曲家コール・ポーター。インディアナ州の富豪の家に生まれ、幼少の頃からピアノとヴァイオリンを学び、エール大学とハーバード大学では法律を学ぶが、音楽家の道を選ぶ。1916年に初のミュージカル作品を発表するも15回で打ち切られる失敗作だった。その後フランスに渡り、裕福な未亡人リンダと結婚。精力的に創作活動を行ない、20年代後半から立て続けにヒット作を作り大人気作曲家となる。多くのミュージカルと映画音楽を手掛けたが、作詞・作曲ともに都会的なセンス(育ちの良さ、あるいはおぼっちゃま的?)が感じられるポーター作品はまさにアメリカの音楽遺産と言えるものである。多くのポピュラー歌手はもちろん、ジャズマンもこぞってポーター作品をとり上げており、多くの作品がジャズ・スタンダード化している。
ちょっと思いつくままに上げるだけでも、「エニシング・ゴーズ」「夜の静けさに」「君にこそ心ときめく」「ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングズ」「オール・オブ・ユー」「ビギン・ザ・ビギン」「アイ・ラヴ・パリ」「イージー・トゥ・ラヴ」「イッツ・オール・ライト・ウィズ・ミー」「恋とは何でしょう」「ラヴ・フォー・セール」「ナイト・アンド・デイ」「ソー・イン・ラヴ」「アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン」などなど(まだまだたくさん)、ジャズ・ファンならずともポーターの曲を耳にしたことがない人はいまい。
ジャズの「コール・ポーター作品集」は膨大な数が発表されているが、エラ・フィッツジェラルドの『シングス・ザ・コール・ポーター・ソング・ブック』は、特にヴォーカル・ファンにはお薦めの定番アルバムだ。エラは7人の作曲家の『ソング・ブック』シリーズを作ったが、これはその第1弾にあたる。CD2枚にポーター作品32曲35トラック収録のまさにソング・ブック。また、ヴォーカルで聴く場合はポーターの歌詞にも注意したい。これがまた曲に負けずにすばらしいのだ。
写真:『シングス・ザ・コール・ポーター・ソング・ブック/エラ・フィッツジェラルド』(Verve/ユニバーサル)