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Victor Jazz Cafe - ビクタージャズカフェ

Jazzアルバムの楽しみ方 〜名盤の聴きどころ

2005-10-30

『ザ・ビギニング・アンド・ジ・エンド/クリフォード・ブラウン』

1956年、トランペットの天才クリフォード・ブラウンはわずか25歳でこの世を去った。ブラウンの場合は破滅型天才の伝説によくあるような事由ではない。
 1952年にデビュー、53年にはタッド・ダメロン(ピアノ)のグループでジャズの活動を開始。翌年にはアート・ブレイキー(ドラムス)のグループへ参加を経て、マックス・ローチ(ドラムス)と双頭リーダー・グループを結成し、数々の名盤をリリースした。まさに天才としか言いようのない華麗で完璧なテクニックと歌心あふれるアドリブは、いまだに超える者はいない(と思う)。活動期間はわずかに5年ほどだったが、アルバムは比較的多く、また人気もあるので残存する音源はSPも含めすべて発表されている。
 さて、それらアルバムの中で驚きなのは『ザ・ビギニング・アンド・ジ・エンド』である。その題名どおり、ここにはブラウンの最初と最後の録音が収められている。最初の録音は、デビュー間もない52年のクリス・パウエル&ヒズ・ブルー・フレイムスでの演奏。これはこれでデビュー当時を知る貴重な音源だが、驚きは「最後」。なんと死の直前のセッションなのである。56年6月25日の夜、ブラウンはフラデルフィアで行なわれていたジャム・セッションに参加した。これはジャズ・クラブではなく、楽器店で定期的に行なわれていたイヴェントだったので、ほとんどの演奏はテープに収められていたという。それがこの音源。
 そしてセッションの後、ブラウンはピアニストのリッチー・パウエル夫妻とともに車で出発。次のツアー先のシカゴへ向かう途中、日付が変わって26日の早朝、ペンシルヴァニア・ターンパイクで堤防に衝突して死亡する。
 音を聴くと、ローカル・ミュージシャンとのセッションとはいえ、ブラウンはまったく手を抜くことはなく、むしろそんな気楽な状況だったからか、演奏することの喜びが伝わってくるような生き生きとしたすばらしい演奏である。「レコード」を文字通り「記録」という意味で考えると、これほど劇的な要素を持ったレコードは他にはない。この事実を知って聴くと、最後の曲が終った後、ぐっとこみあげるものを感じてしまうのだ。

『ザ・ビギニング・アンド・ジ・エンド/クリフォード・ブラウン』(Sony/ソニーレコード)


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