『インチュイション/ビル・エヴァンス』
エディ・ゴメス(ベース)は66年より11年間ビル・エヴァンス(ピアノ)と行動をともにした。エヴァンスとゴメスの相性はたいへんすばらしく、トリオはまさに安定した充実の活動であった。しかし彼らはそこにとどまらず、多くのチャレンジを試みていた。
エヴァンス・トリオはこの時期にかかわらず、膨大な録音を残している。そしてそのほとんどがトリオ編成だが、ゴメス時代の特徴が「ベースとのデュオ」「エレクトリック・ピアノの使用」があることだ。デュオ・アルバムは2枚あり、これはゴメスとのグッド・コンビネーションの証。エレピは71年ごろからの使用だが単に時流に乗ったわけではなく、アコピと組み合わせるなど、その導入には意欲が感じられるものだ。当時の評価は必ずしもよいものばかりではなかったようだが、その挑戦の意思こそが「ジャズ」なのではないだろうか。「エヴァンスはアコースティック・トリオ」という最高の定評ある看板を自ら変えようとしていたのだ。
74年の『インチュイション』はデュオでエレピ。これどうでしょう。形式からみるともっともエヴァンスらしくないエヴァンス?。いやいやこれが強烈にエヴァンスしているのだ。
エヴァンスは「60年代初頭のスコット・ラファロ(ベース)在籍時のトリオが最高」という定説に異論はないが、変化し挑戦し続けたゴメス時代もすばらしいと思うのだ。
写真:『インチュイション/ビル・エヴァンス』(Fantasy/ビクターエンタテインメント)
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