9月7日のソニー・ロリンズの誕生日にちなんで、ロリンズの最高傑作として名高い『サキソフォン・コロッサス』を聴いてみましょう。このアルバムは1956年6月、ロリンズ26歳の録音ですが、すでにマイルス・デイヴィス(トランペット)のグループなどで名声を得ており、まさに絶好調期の録音です。現在にも続くゴツゴツした豪快な“ロリンズ節”はすでに完成されており、またテナー・サックス+ピアノ・トリオという編成なので、ロリンズの魅力をたっぷりと味わえるアルバムです。
このアルバムの魅力を簡単に言えば、“ロリンズのあふれる歌心”です。ともすれば技巧にはしりがちのモダン・ジャズにあって、このアルバムはどの曲を聴いてもそこに“歌”が感じられることでしょう。中でも冒頭の「セント・トーマス」は、明るい曲想とラテンのリズムがその歌心をさらにハッピーなものにしており、ロリンズの代表的名演として愛され続けています。もちろんそれを支えるバックも好演。特に躍動感に満ちたマックス・ローチのドラムスがロリンズを鼓舞しているのがよくわかります。
そしてもうひとつの魅力は、最後まで一気に聴かせる構成のよさ。ラテン・ビートの「セント・トーマス」に始まり、バラード、アップテンポ、有名スタンダード、ブルースという曲順とバランスのよさは、途中でストップボタンを押させないゴキゲンな流れを作り出しています。
ちなみに年季の入ったファンはこのアルバムを『サキコロ』と呼びます。「ソニー・ロリンズの」と言う必要もありません。CD店でも(たぶん)通じます。アルバムが略称で通用するというのも人気の高さを物語っていますね。
『サキソフォン・コロッサス/ソニー・ロリンズ』
(ビクターエンタテインメント)1956年録音
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