『ポンタ・ボックス・ライヴ・アット・ザ・モントルー・ジャズ・フェスティヴァル』
*もうすぐJVCジャズ・フェスティヴァルが始まるので、ここでもジャズ・フェスの話を。
ジャズ・ファンにもっともよく知られるジャズ・フェスは、なんといってもスイスの「モントルー・ジャズ・フェス」。そしてそれを知らしめたのは、なんといっても『Bill Evans At Montreux Jazz Festival』(68年/Verve)だろう。
モントルーはレマン湖のほとり。エヴァンスのジャケットになっているシオン城は(ジャズ・ファンには)モントルーの象徴となっている。モントルーは人口2万人あまりの小さな町だが、夏のジャズ・フェスには20万人を超える観客が訪れる。2006年で40年目を迎えたモントルーは今では名実ともに世界一のジャズ・フェスだが、もともと町おこしで始まったものだという。
その40年の間にはビル・エヴァンスをはじめ、多くの人気ジャズマンが出演し、多くのライヴ・アルバムが作られてきた。またそこには「名盤」も数多い。「モントルーのライヴ盤」は、いわばジャズマンにとってひとつのステータスとも言えるものになっているのだが、その憧れ(?)が勢い余ってパロディーになってしまったのが『ポンタ・ボックス・ライヴ・アット・ザ・モントルー・ジャズ・フェスティヴァル』だ。
95年、村上ポンタ秀一率いるトリオ「ポンタ・ボックス」がモントルーに出演、そのすばらしい演奏の記録が『〜モントルー〜』なのだが、まずジャケットがエヴァンスの引用。司会者の紹介からアルバムが始まるのもエヴァンスと同じだ。演奏の内容はマイルス・デイヴィス・メドレーが中心だが、アンコールはなんとエヴァンスの(『モントルー』でももちろん演奏している)代表曲「ナーディス」。モントルーで「ナーディス」というのは、挑戦なのか愛なのか。
エヴァンスの『モントルー』を知らないでポンタ・ボックスの『モントルー』を聴いている人がいるなら、すぐにエヴァンスを聴いてほしい。どちらも何倍もおもしろく聴こえてくるはずだ。
(「Jazzの名曲を楽しむ」に続く)
写真:『ポンタ・ボックス・ライヴ・アット・ザ・モントルー・ジャズ・フェスティヴァル』(ビクターエンタテインメント)