『グルーヴィー/レッド・ガーランド』1957年録音
1957年の8月9日、レッド・ガーランドの代表作『グルーヴィー』(正確に言うとそのLPのA面分)が録音されました。すでに50年近くも前のアル
バムですが、今聴いてもその演奏は実に新鮮です。聴きどころはなんといってもアルバム冒頭の「Cジャム・ブルース」。形としてはよくあるミディアム・テンポのブルースで、ブラシだけのドラムスは地味だし、丁々発止のやりとりがあるわけでもない。でも、これがどんどん引き込まれてしまうんですね。
レッド・ガーランドのスタイルの特徴は、軽快なタッチで歌うような右手のメロディと、規則的に入る左手の合いの手。この左手はごく軽く入るだけにもかかわらず、その絶妙のタイミングが演奏にグイグイと勢いをつけて共演者をプッシュし、聴き手の体もゆすり続けてしまいます。
共演しているポール・チェンバース(ベース)とアート・テイラー(ドラムス)が、ガーランドと多くの共演経験があり、お互いを熟知した間柄というのもこの名演の理由のひとつ。随所に「あうん」の呼吸が感じられます。ガーランドの後半のリズミックな盛り上げに、ベースとドラムがさりげなく寄り添っていく様子などは実に楽しい。
同メンバーの同日録音を含む“兄弟”アルバムもリリースされているにもかかわらず、『グルーヴィー』の人気はダントツです。「Cジャム」だけでなく、A面ラストのアップ・テンポ「ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン」もすばらしい演奏で、その間をバラードがつなぐという曲の並びも絶妙。カッコいいジャケットと相まって、アルバムとしてもよくできているのがその人気の理由だと思いますが、どうでしょう。
ちなみに、タイトルの「グルーヴィー」とは「ノリがいい」「ごきげん」「カッコいい」という意味で今ではほとんど日本語化していますが、「groove」はレコードの「溝」のことでもあります。
なお、ガーランドは1950年代に大人気だったにもかかわらず、1960年代初めに突如として引退(70年代に一度復帰するもののすぐ引退)してしまいました(1923.5.23〜1984.4.23)。
『グルーヴィー/レッド・ガーランド』 (ビクターエンタテインメント)