『ソニー・クラーク・トリオ』(Blue Note)
*今月はソニー・クラークのアルバムを紹介します。
前項で紹介した『クール・ストラッティン』の2か月ほど前、クラークはトリオ編成でアルバムを録音していた。『クール〜』と同じベース(ポール・チェンバース)とドラム(フィリー・ジョー・ジョーンズ)である。そしてこれまた『クール〜』同様に、たいへん人気のあるアルバムだ。だが、クラーク初のトリオ・アルバムにもかかわらず、自作曲は1曲もない。「朝日のようにさわやかに」★「時さえ忘れて」「四月の思い出」などすべてよく知られたスタンダードで構成されている。
ピアニストにとってトリオはもっとも自分の音楽をやれる編成であるから、オリジナルが入っていてもよさそうなものだが、と思って調べてみると、クラークはこのころたいへんな勢いでアルバムを作っていた。57年の7月に3管フロント編成のファースト・アルバム、10月に同じ編成でもう1枚、そして11月のこのトリオ、12月にカルテット、翌年1月に『クール〜』と続いている。売れっ子の新人だったのだ。そう思うと、「アレンジとオリジナルは他でたくさんやているから、トリオではスタンダードをネタにソロをたっぷりやろう」となったのかというふうにも聞こえてくる。勢いのあるすばらしい演奏だ。
『ソニー・クラーク・トリオ』1957年11月3日録音(Blue Note)