「チュニジアの夜」
原題:A Night In Tunisia 作曲:ディジー・ガレスピー、フランク・パパレリ
クリフォード・ブラウンが最後のジャム・セッションで吹いたのは「ドナ・リー」「ウォーキン」そして「チュニジアの夜」だった。「ドナ・リー」はセッション向けではなく、ブラウンのハイ・テクニックを聴かせてもらうための曲であるが、「チュニジアの夜」はまさにセッション向けの曲。定番アレンジはメロディとバック・リフによるテーマ合奏に続いて、「アドリブ・コーラス前のブレイクでのピックアップ・ソロ」と「エンディングのカデンツァ」を入れることである。そしてその2カ所をどう聴かせるかが腕の見せどころとなる。ブラウンの場合もお客さんがそこに期待しているのが明らかにわかる。
わずか4小節のフレイズでも歴史に残るものもある。『ストーリー・オン・ダイヤルVol.1/チャーリー・パーカー』に収録の超絶「ブレイク」は「フェイマス・アルト・ブレイク」と呼ばれ、マンハッタン・トランスファーがヴォーカリーズしたり、チャカ・カーンのアルバムでハービー・ハンコックが引用していたりと、アドリブの一節というよりも「その瞬間に作曲された曲」というほど完成されたフレイズである。
写真:『ストーリー・オン・ダイヤルVol.1/チャーリー・パーカー』(Dial/東芝EMI)