「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」
原題:My Funny Valentine 作詞:ロレンツ・ハート 作曲:リチャード・ロジャース
アルバムの項で紹介した『クッキン』はバラードの「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」で始まる。マイルス・デイヴィスはその後も『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』でとり上げるなど、マイルス・バラードの看板曲のひとつとなったが、もともと1930年代のミュージカル曲なので、マイルス以前からたくさんの名演が残されている。
ヴォーカル、インストともに多いが、中でもチェット・ベイカー(トランペット&ヴォーカル)は好んでとり上げており、54年の『チェット・ベイカー・シングス』でのヴォーカルはマイルス以上によく知られた演奏だろう。そのもの憂げな歌い方はけっしてうまいとは言えないが、実に魅力的だ。
ちなみにこの歌詞は、女性がハンサムではないヴァレンタイン君(男性)に語りかけるものであるが、チェットをはじめ男性も多く歌っており、フランク・シナトラもそのまま歌っている。
写真:『チェット・ベイカー・シングス』(Pacific Jazz/東芝EMI)