アルバムの項で紹介した『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』には数曲のスタンダードが収録されていますが、その中でひときわ美しいバラード「ナンシー」。この「ナンシー」とはフランク・シナトラの娘ナンシーのこと。1944年にまず歌詞が書かれ、翌年ジミー・ヴァン・ヒューゼンが曲を付けました。シナトラは幼い娘のためにかかれたこの曲がお気に入りでたびたび録音しています。
ジャズ演奏でもっともよく知られるのはジョン・コルトレーン(テナー・サックス)の『バラード』での演奏でしょう。その後にベン・ウェブスター(テナー・サックス)やポール・デスモンド(アルト・サックス)ら多くのジャズマンが取り上げるようになりましたが、アダレイの録音はコルトレーンの1年前になります。それまではほとんど取り上げられることのない曲でしたので、このアダレイの名演がスタンダード化のきっかけになったのでしょう。曲の“発掘”もミュージシャンの力量ですね。
『バラード/ジョン・コルトレーン』
(ユニバーサル)1962年録音
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