「バード・オブ・パラダイス」
原題:Bird of Paradise
作曲:Charlie Parker
■6月はK2HD CDで発売中の渡辺貞夫のアルバム収録曲を紹介します。
『バード・オブ・パラダイス/渡辺貞夫 ウィズ・ザ・グレイト・ジャズ・トリオ』 のタイトル曲「バード・オブ・パラダイス」はチャーリー・パーカーの作曲となっているが、この曲には明確なテーマ・メロディがない。イントロの後、いきなりアドリブである。このイントロはチャーリー・パーカーも演奏している定番イントロなので、このイントロがテーマといえるものかもしれないが。
本編コード進行はジェローム・カーン作曲のミュージカル曲「オール・ザ・シングス・ユー・アー」と同じ、というより借用したもの。ビ・バップの時代にはこのように有名曲のコード進行を借用して別のメロディをのせ自身のオリジナルとしているものは少なくない。だが、チャーリー・パーカーはそのテーマすら省いていきなり「オール・ザ・シングス・ユー・アー」のアドリブに入る演奏に「バード・オブ・パラダイス」とタイトルをつけたというものだ。つまり「バード・オブ・パラダイス」は決まったメロディがない「曲」なのである。
というわけで渡辺貞夫の「バード・オブ・パラダイス」は当然チャーリー・パーカーが吹いたものとは違う。パーカーの録音はいくつかのテイクが残されているが、全部メロディが違うし、渡辺貞夫は後に映像作品『パーカーズ・ムード』でもこの曲を演奏しているが、当然違うメロディである。言い換えれば「テーマ・メロディを吹かないオール・ザ・シングス・ユー・アー」ということなのだが、そこに「バード・オブ・パラダイス」と名付けるのは「アドリブ・ソロがすべて」というビ・バッパーとしての意思表示なのだ。
写真:『ストーリー・オン・ダイアルvol.2/チャーリー・パーカー』(コロムビアエンタテインメント)