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Victor Jazz Cafe - ビクタージャズカフェ

マスターのお話

詳しいレポートはこちら>> JVC Jazz Festival

マスター今年の夏は暑かったですね。みなさん、お元気にお過ごしでしたか?
真夏の野外で1日中Jazz Festivalを楽しめるのは、海外ならではかな?

日頃は会社員でありながら、学生時代からJAZZバンドを続けているbobby2さんが「マスター、JVC Jazz Festival @ Newportについに行ってきたよ!」と嬉しそうに話してくれた。

最近、Jazz好きなお客様が増えてきてね、マスターは色々なお土産話を聞くのがとても楽しい。

今回は暑い夏を乗り切った皆さんへ、マスターのお土産をおすそ分け!
スペシャルプレゼントを用意しました。 応募はこちら



ニューポートについにやってきた。
シカゴで乗り継ぎ、プロビデンス空港へ降り立つ。プロビデンスからニューポートの街へ入ってくるとそこかしこにジャズフェスの表示が目立つ。イヤが上にも期待と興奮が高まる。しかし、街にジャズが流れているわけでもなく、観光客も地元の人々も普通に冷静な感じ、大人だ。ニューポートはジャズも有名だが、アメリカズ・カップの発祥の地として、ヨットでも有名だ。町全体に海の香りが漂い、かもめがたくさん飛んでいる。ここの野球チームはニューポート・ガルズ(かもめ)だ。まずはハードな演奏に耐えられるよう、今日はシーフード(ロブスターとクラムチャウダー)で腹ごしらえをしておこう。

食事がすんだら夜の8時から始まる前夜祭パーティに潜入だ。前夜祭はこのニューポートの街に古くからあるテニスクラブのコートに特設のステージを作って野外でジャズを聴く。ところが夕方からかなりの勢いで雨が降ってきていた。何の装備もない私は雨具を買いに地元のスーパーへ出向く。ところがどの店に行ってもカッパは売り切れ。しまった。先を越された。仕方がないので、黒いゴミ袋を買う。これに3つ穴を開けて頭と腕を通せばなんとか大丈夫だろう、ということで会場に向かったのだが、案の定、地元の人々、関係者は装備は完璧。もしくはそのまま濡れて聴く姿勢。あくまでダンディだ。テニスクラブは由緒正しく見るからに名門。とてもじゃないがゴミ袋はかぶれず、濡れて聴くことにした。

カウント・ベイシー・オーケストラ フィーチャリング ニーナ・フリーロン


 2007 JVC Jazz Festival Newport, RI

のっけからビッグバンドの名門、カウント・ベイシー・オーケストラの登場だ。カウント・ベイシーといえば、その強力なグルーブで世界中のビッグバンドファンから神と奉られているバンド。しかし全盛時は1930〜1950年代ということで、往年のスター・プレイヤーはもう誰もいないし、御大ベイシーもすでにこの世の人ではない。しかし、世界中で追求されているベイシー・スタイルの本家本元、しっかりその伝統は継承されており、いきなりすばらしいビッグバンド・サウンドが響き渡った。


 2007 JVC Jazz Festival Newport, RI

Who Me、In a Mellow Tone、Basie!とおなじみのナンバーが続く。最初のうち、会場のPAもまだしっかり音が出せていず、メンバーもマイクを無視して生音で勝負しているのだが、出てくるサウンドは完璧。トランペットは鳴りまくる、サックスはうねりまくる。どしゃぶりの会場は早くもノリノリに。そしてすっかりオーケストラで会場が暖まったころ、艶やかな着物風ファッションでボーカルのニーナ・フリーロンが登場した。さて何を歌うのかなと思ったら、なんと1曲目はShinny Stockings。やはりすでに他界した名ボーカリストのエラ・フィッツジェラルドとカウント・ベイシー楽団の名演奏、名盤が残されているこの曲にあえてチャレンジ。ソウルフルな現代的な解釈を施し、見事な熱唱で観客を惹きつけた。やはりアメリカは層が厚い。

ダイアン・リーブス


 2007 JVC Jazz Festival Newport, RI

ニーナ・フリーロンもダイアンの前ではさぞやりづらかったろう。現代女性ジャズボーカリストの中では一二を争う名声と腕前を持つダイアン・リーブスが貫禄の登場だ。ラテン系のリズムで雰囲気のある長いイントロの間、ダイアンは空気を作るかのようにスキャットでつむいでいく。時折即興の歌詞で観客に話しかける。サラ・ボーン譲りの客席とのコールアンドレスポンスで、すっかり自分の世界に聴衆を引き込む。そして曲に入った。一曲めはボサノバの父、アントニオ・カルロス・ジョビンのTriste。さすがの歌唱力でこの曲を見事にダイアン色に塗り替えた。ピアノのジェフ・キーザーも刺激のあるハーモニーで曲にインパクトを加えていく。これは前夜祭を盛り上げるのにベストなセットとなるぞ。

気がつけば雨はやみ、夜空に星がちらつきはじめた。

さて初日

JVC Jazz Festival初日の朝を迎えた。11時半からコンサートが始まるので10時40分にはホテルを出る。ここハイアットリージェンシーから会場まではほぼ15分とみた。しかし車を出してみたら海岸沿いの道がびっちり渋滞。きのうまで冷静だったこの街が今日はみんなジャズファンに変貌か?

この渋滞に巻き込まれていたらしょっぱなのジョシュア・レッドマン・トリオに遅れてしまうではないか!ということで冒険を試みた。遠回りをすることに決定。
会場のフォートアダムスは小さな半島の突端にある。1700年代にスペインの攻撃からアメリカを守るために作られた大きな砦だ。この城壁の外側に海に向けてステージが作られる。

半島をぐるっと大回りをしていくと大正解。渋滞は回避できたし、海沿いの快適な道が続く。山側には往年の石油王や鉄道王が避暑地に選んだだけあって、豪邸というより巨大なお屋敷が続く。
ほどなく渋滞組に合流、ノロノロと会場のフォートアダムスに入っていく。駐車場は満杯。海には大量のヨット。彼らはタダ聴きか?

会場には3つのステージがある。メインの巨大なステージと、小さなウォーターサイド・ステージ、中規模のパビリオン・ステージだ。メイン以外でも、小ステージならではの渋いミュージシャンたちが好演を聴かせてくれるはずだ。追ってレポートしていこう。

ジョシュア・レッドマン・トリオ


 2007 JVC Jazz Festival Newport, RI

メインステージの一番目はジョシュア・レッドマン・トリオ。進境著しいこのテナーサックスマンは、有名なテナー奏者デューイ・レッドマンの息子。親父のデューイは残念ながら昨年亡くなった。今年のジョシュアは父親の影を吹き飛ばさんとしてか、演奏に熱が入っている。今回は巨匠ソニー・ロリンズの有名な曲をモチーフにして彼なりのアレンジで取り組んでいる。

テナーサックスといえば、低音域にムーディーに迫る楽器と思われがちだがジョシュアのテナーは饒舌で音域が高い。トランペットのような高い音を出す。その分自由自在だ。すべてのことをテナーで語りつくそう、としているかのように大量の音符を放出している。だからピアノがいないのだな。ベースとドラムだけで十分なバッキング。しかしながら、このバック、ドラムのエリック・ハーランド、ベースのクリスチャン・マクブライドらも、とにかく並外れた超絶技巧。3人で飛ばす飛ばす。ジョシュアが100個音符を放出すればバックも負けじと倍の音符をたたき出す感じ。これは聴くほうも体力と集中力を要する。でも興奮の後に心地よい疲れが待っているんだな。


2007 JVC Jazz Festival Newport, RI

ブルース・ホーンズビー・トリオ

2組目はブルース・ホーンズビー・トリオ。ドラムのジャック・ディジョネットは超有名なジャズドラムのマスター。マイルス・デイビスやチック・コリア、ハービー・ハンコック、パット・メセニー、マイケル・ブレッカー等超一流のジャズソリストから御用達な人。べ―スはクリスチャン・マクブライド連投。この人も最初に電話がかかる人(ファースト・コールと言います)だな。あちこちのバンドを掛け持ちしてる。で、リーダーのブルース・ホーンズビーだが、はて??ホーンズビーといえばあの有名なヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの全米No.1ヒット曲「Jacob's Ladder」の作曲者だが、とにかく生粋のポップス畑の人。なんでまたピアノトリオなんぞ?

したらこれがまたなんと変なピアノ。確かにジャズを弾いている。ジャズというかフリージャズなんだけど、途中打ち込みのビート系ドラムなんかを再生したりする。ちょっと只者ではない。。

モンク・レガシー(モンク生誕90周年記念ベン・ライリー・セプテット)


 2007 JVC Jazz Festival Newport, RI

ちょっとほかの会場も聴きに行ってみよう。パビリオン・ステージでは、モンク・レガシーと称して1982年この世を去ったジャズの巨星セロニアス・モンクの音楽をトリビュートしたバンドが演奏していた。中心になっているのはベン・ライリーというモンクと実際に演奏していたドラマー。そしてドン・シックラーという西海岸の才人トランペッターが4管のアレンジをつけて周りを固めている。特筆すべきはベース!日本人なのだ。北川潔さんというニューヨークを中心にして活動しているベーシスト。このベースがバンドを支えている、と言っても過言ではない!どっしりと落ち着いた理知的なラインはほかの演奏者に安定したスイング感を与え、自由なインスピレーションを提供している。ベースソロになると、これまた個性的なソロで聴衆を引き込む。ベースソロの後はひときわ大きい観客の歓声があった。ニューヨークでもいまやファーストコール(覚えましたね?)だというのも頷ける話だ。演奏終了後、バックステージで出待ちをしたら、人懐っこい笑顔でこちらにやってきた。「いや、あっついね〜」関西系の方なのだ。「明日もここでやるから、また来てぇナ」明日はジョン・ファディス・カルテットで出演。さすがファーストコール。(しつこい)
「ホナまたな。」明日もここで出演、というのに片道4時間のニューヨークへ帰っていった。今夜もニューヨークのどこかでライブ・・今本当に世界の花形ベーシストのひとりなのである。

チコ・ハミルトン&ユーフォリア


 2007 JVC Jazz Festival Newport, RI

モンク・レガシーの後はチコ・ハミルトンのバンド。これまたリビング・レジェンド(生きた伝説)の登場だ。確かチャーリー・バーカーと共演したこともある大ベテランだ。若手のベース、ビアノ、アルトサックス、テナーサックスに囲まれてカクシャクとした演奏を見せる。いや、逆に若手に目配せしながらリードしている感じだな。若手がいい演奏をすればニヤリと口の端を吊り上げる。すると若手もはりきってさらに盛り上がる、という非常にいい雰囲気の家族的なバンドだ。アルト奏者は見るからに厚顔の美少年。いつもキョトキョトしている。アンサンブルを吹くときも遠慮気味だ。そんな引っ込み思案なことじゃジャズ業界渡っていけねーぜ!と言われそうな彼が、チコに「おい、オメーのソロだぜ」と目合図されると、一転火の噴いたような超絶ソロを吹き始めた。そんなエネルギーがどこに!?という意外な展開に観客もやんやの喝采。ソロを終えて恥らう姿は、アルトのハニカミ王子そのものだった。

 

ブランフォード・マルサリス


 2007 JVC Jazz Festival Newport, RI

メインステージに戻ってみるとブランフォード・マルサリス・カルテットがトリを務めていた。このカルテットは10年以上メンバーチェンジをせずにやってきただけに異常に息が合っている。誰が何をし始めるか、がはじめる前からわかりあってしまっている感じだ。

だからすごい自由な空間がある。ピアノソロだろうとベースソロだろうと、ドラムのジェフ・タイン・ワッツは叩きまくる。ガーーーッと叩いてパッと音量を落とすとしっかりその他のメンバーがその隙間から音を立ち上げてきて、まったく無駄のない、ツボにはまりっばなしの演奏が展開される。ブランフォードは自分がソロを吹いていない時は後ろの座面の高い椅子に座ってニヤリニヤリしながら、時々叫んだり、メンバーのそばまで行って耳打ちをして大笑いしたりしている。それでも出てくる音は完璧にコントロールされた一部の隙もないものだ。ブランフォードがセンターに立つ時はメンバーはもう安心してさらに飛ばす。ブランフォードも自由自在だ。飛び回り、地を這い、くるくる回ったかと思うと、ジョークを飛ばし(音楽の話ですよ?)観客を煙に巻く。ここまで互いに自由に会話のできるバンドは世界広しと言えども往年のマイルスバンド以外ないはずだ。

ディジー・ガレスピー・オールスター・ビッグバンド

さてメインステージ2日目のトップバッターはほっぺた膨らみ上向きトランペットでおなじみのディジー・ガレスピー・ビッグバンド。といっても御大ディジーは既に天国。往年の彼のビッグバンドのレパートリーを中心にトロンボーン奏者のスライド・ハンプトンがアレンジを書き、指揮をするバンドだ。そこにディジーの茶飲み友達、ジェームス・ムーディ(ts)とジミー・ヒース(ts)が入っている。ジミーはヨボヨボだが、サックスを吹くとバリバリ。人間こういう風に年はとりたいものだ。

スライド・ハンプトンはビッグバンドのアレンジメントを熟知している。名編曲家サド・ジョーンズを引き継ぐ伝統的かつ爆発的な手法でビッグバンドの醍醐味を余すところなく引き出す術を心得ている。だからいやおうなく盛り上がる。メンバーの力を最大限引き出し、あちこちで小爆発を引き起こした後で全員で大爆発を起こす。はたまたせせらぎのような、絹の擦れ合うような管楽器のアンサンブルで観客を魅了する。まさにビッグバンドの魔術師だ。彼がディジーゆかりのにぎやかな曲をビッグバンドの語法につむいでいく。ビッグバンドファンにはたまらないセットとなった。

パキート・デリベラとパンアメリカーナ

セカンドセットのパキート・デリベラはキューバ出身のアルトサックス奏者。最近はクラリネットも吹いている。この人の持ち味はとにかく陽気で脳天へ突き抜けるようなサウンドなのだが、今回のセットはちょっと違う。チェロやアコーディオンを配してタンゴ的なサウンドで攻めてきた。ここのチェロの人は面白い。大友克洋の主人公のような目つきの鋭い青年でチェロのほかにトロンボーンも持ち替える。ケンカごしのその態度がなぜかチェロという楽器に合っていて面白い。しかし、パキートさん、ちょっとクラリネット練習不足ね。ごまかしてるぞー。でも最後はアルトに持ち替えて定番「トゥ・ブレンダ・ウイズ・ラブ」でサンバ大会。やっと突き抜けてくれました。

BBキング

フェスティバルの最後を飾るのはBBキング。言わずと知れたブルースの神様だ。奥さんはブルースの女王、淡谷のり子(ウソ)。もう立って演奏はできない神様だが、椅子に座っても演奏もしゃべりもまったく衰えていない。愛器(ギター)ルシールを携えて本日もクロスロードまっしぐら。バックを紹介するときは「うちのヤングギターを紹介するよ」「うちのヤングベース・・」とすべてヤングがついてしまうわけだが、どう見てもメンバーは50すぎのオッチャンだ。しかし出てくる音は強力。何十年も観客を躍らせてきたそのステージングにまったく衰えはない。どこをどう切っても盛り上がる要素しかない。したがって観客は自動的に総立ち。立ってないのは当のBB本人だけだ。そして会場は一気にゴスペル教会と化した。

BBのブルースが最高潮に達した時

BBのブルースが最高潮に達した時、ニューポートの海に日が落ちて空が真っ赤に染まり、今年もJVC Jazz Festivalの幕が静かに閉じられた。

またぜひ来たい。
帰りも渋滞だ。



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