Victor Jazz Cafe - ビクタージャズカフェ
マスターに聞こう！
「ジャズ検定」の問題で、チャーリー・パーカーの「オーニソロジー」って「鳥類学」って意味だと知って驚きました。他にも、こんな驚いたり笑っちゃったりするタイトルの曲はありませんか？
inaba178さん、いらっしゃいませ。
歌詞のついた曲ならば、その内容から曲タイトルが付くのが普通だろうけど、インスト曲だと付け方にルールはないわけで、だからジャズ曲のタイトルらしからぬいろんなものがある。まあ、我々日本人にとっては、英語だと何でもそれなりにタイトルとして感じられるけど、意味を考えると「何コレ？」っていうのはけっこう多いですよね。思いつくままに挙げてみましょう。
「らしからぬ系」
チャーリー・パーカーでは「アンソロポロジー」＝「人類学」というのもありますね。パーカーに限らずビ・バップ曲のタイトルは突拍子もない単語だったり、造語らしき言葉がよく出てきます。ビ・バップはアドリブが命。コード進行が有名曲からの借り物だったりすることも多いので、タイトルには大した意味を持たせていないということなのでしょう。
ウェイン・ショーターが、90年代のあるインタビューで「インスト曲はタイトル以外にイメージを喚起するものがないから慎重に考える」と語っていたけど、そのショーターも60年代には「Mahjong」（麻雀）という曲を発表している。東洋趣味ではジョー・ヘンダーソンの「Jinrikisha」（人力車）もよく知られるところ。
「言葉遊び系」
マイルス・デイヴィスやウェス・モンゴメリーの演奏でも知られるソニー・ロリンズの「エアジン（Airegin）」。これは、「ナイジェリア」を逆に綴ったもの。でも何でナイジェリアかはわかりませんが。
マイルス・デイヴィスの「セリム」「シヴァッド」はそれぞれ「Selim」「Sivad」で、逆から書くと「Miles」「Davis」となります。そもそも収録アルバムからして『ライヴ・イヴィル（Live Evil）』ですからね。
セロニアス・モンクの「バルー・ボリヴァー・バルーズ・アー（Ba-Lue Bolivar Ba-Lues-Are）」は、別名が「ボリヴァー・ブルース」だから、それのもじりなんでしょうが、Bolivarはベネズエラの通貨単位にもなっている政治家の名前と辞書にはある。どういういきさつなんだろう？ 文字の並べ替えといえばビル・エヴァンスの人気曲「Re:person I knew」がよく知られていますね。これは正統的なアナグラム（文字の並べ替え）で、元の単語はプロデューサーのOrrin Keepnewsです。感謝の意を込めて、ということでしょう。これはとてもいいタイトルですね。
「理由あり系」
変なタイトルでも、それなりに付いた理由があるものもある。ブレッカー・ブラザーズの「ノット・エチオピア」は、「この曲のタイトルは＜エチオピア＞ですね？」と聞かれたマイケル・ブレッカーが「＜エチオピア＞ではない」と答えたのが、曲名になったと言われてます。そのバンドにいたマーカス・ミラーが後に「エチオピア」という曲を発表してますが、関係あるのかな？ そのマイケル・ブレッカーも演奏に参加したドン・グロルニックの「オア・カム・フォグ（Or come fog）」という曲があるけど、なぜ「または霧」かというと、この曲はスタンダードの「カム・レイン・オア・カム・シャイン（降っても晴れても）」のコード進行を一部借りた曲だから。まあ、これは変なタイトルというほどではないですが、知っているとちょっとおもしろいよね。
「意味不明系」
フリー／現代音楽系で、あえてタイトルに意味を持たせないために「コンポジション×番」というのはよくありますけど、逆にわけのわからないものを付けるという手もあります。エリック・ドルフィーの『ラスト・デイト』収録の「Hypochristmutreefuzz」（ミシャ・メンゲルベルク作曲）はどういう発想なんだろう。読めないよ。
極めつけはアンソニー・ブラクストンがたびたび付ける「絵」ですね。これは「絵」というタイトルじゃなくて、点線や矢印やいろんな図形が組み合わされているもの。当然発音不可能です。また、「N-M488-44M-Z」みたいなものもあったりする。でもこれらはアヴァンギャルドな感じがして、実に「らしい」ものとも言えますが。
たまには辞書片手に聴くと新たな発見があるかもね（？）
店のコーヒーもスーパー・ウルトラ・チャーリー・コルトマイルス・ブレンドなんて名前にすればもっとおいしく感じるかな。
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