bowingさん、いらっしゃいませ。
おっしゃるとおり、バリトン・サックスはビッグバンドのサックス・セクションには必ずいますが、アルトやテナーのようにソロ楽器として扱っている演奏者は少ないですよね。でも、あのブリブリ、バリバリとした独特の音色はとても魅力的です。
モダン・ジャズでバリトンと言えば、ジェリー・マリガン(1927-1996)です。ビッグバンドのセクションの名手はたくさんいますが、ソロイストとしてはまずマリガンを聴かずしてバリトンは語れません。
bowingさんはきっとこれまでたくさんバリトンを聴いてきたのですね。そもそもソロ・プレイヤーが少ないこともあって、ご質問の「しっとり系」バリトンのアルバムは少ないのです。そんな中で、マスターのお勧めはジェリー・マリガンの『ジェル』。マリガンの代表作の筆頭に上がる作品ではないですが(マリガンはちょっと特殊な、ピアノなしの2ホーン・クァルテットでの演奏が多く、それが有名ですからね)、このアルバムのファンは実は多いんじゃないかな。
バックはトミー・フラナガン(ピアノ)、ベン・タッカー(ベース)、デイヴ・ベイリー(ドラムス)。アレック・ドーシーのコンガも入っていますが、とても控えめなのでバリトンのワン・ホーン・クァルテットとして聴ける作品です。まあ、言ってみれば、特に仕掛けや話題があるわけではない、ど真ん中のモダン・ジャズ・アルバムです(というのがマリガンの場合、仕掛けや話題なのかもしれないけど)。
「ゲット・アウト・オブ・タウン」「ロンリー・タウン」などのスタンダードや、マリガンのオリジナル・ブルース「ブルー・ボーイ」など全7曲収録。でもアップテンポの曲は1曲もなし、ミディアム・テンポとバラードでマリガンのバリトンをじっくりと堪能できる内容になっています。特筆すべきはトミー・フラナガンのごきげんなサポートぶり。1962年録音作品。地味だけど滋味なんだな。うん、これはいい(しみじみ)