atriKさん、いらっしゃいませ。
ジャズの場合、一般的にアーティストの作品として扱われるのはあくまで「音」(CD)で、映像作品(DVD)は別物という認識ですよね。これまでリリースされたジャズの映像作品はCD作品の映像版(カヴァー・ツアーのライヴなど)がほとんどで、映像作品として独立したものが少なく、そもそも作られる数も少ないということもあって、CDのように広く紹介されてきませんでした。
ただ、最近はDVD付きのアルバムも増えてきましたし、一昔前に比べれば値段もずいぶん下がったこともあって、映像作品を楽しむ機会がかなり増えたように思えます。atriKさんはどうですか? CDと関係しない独立した映像作品も多く作られるようになってきましたので、映像作品を語る時代はこれからという気がします。
ただ、「これ見ずにジャズを語るな」とまではいかないですが、有名な映像はあります。それは1959年4月収録、TV番組「ザ・サウンド・オブ・ジャズ」に出演したマイルス・デイヴィス・クインテットの映像です。30分にわたるマイルスたちのスタジオ・ライヴですが、1曲目が(これぞ必聴の名盤)『カインド・オブ・ブルー』に録音されたばかりの「ソー・ホワット」。この時代ですから映像そのものが貴重であるということももちろんなのですが、この演奏はとにかくすばらしい。マイルス・デイヴィス、そしてジョン・コルトレーンから漂う、なみなみならぬ緊張感とオーラがすごいのです。態度、視線、服装など、CDでは決して知ることのできないヴィジュアルから伝わるものの大きなことに改めて驚きますね。他のメンバーのソロの間にタバコ吸ってるマイルスや、堂々の貫禄ソロのコルトレーンなど、約10分の演奏の間、まったく目が離せません。映像のインパクトをまざまざと感じさせてくれます。
「ソー・ホワット」の後は、ギル・エヴァンス・オーケストラとの共演で「ザ・デューク」など3曲の演奏となります。こちらもいい演奏なのですが、「ソー・ホワット」のすごさに霞んでしまいますね。なお、カラーテレビのない時代ですからモノクロ映像です。そこがまたいいんだけど。
この作品は80年代にビデオソフトというものが世に出始めたときからずっと出され続けていて、ジャズ映像作品(もともとは作品ではありませんが)としては最初に有名になったもののひとつです。なお、紹介しているのは輸入盤です(ジャケットが内容と全然違う写真ですが…)。
お勧めしたい映像作品はまだまだありますので、また続きをやります。どうぞ、またいらしてください。