haruharuyaさん、いらっしゃいませ。
「上手い演奏に慣れた」っていうのは、わかる気がしますよ。天才と呼ばれた人の演奏は何度聴いてもすばらしいんだけど、その刺激にはだんだん慣れていきますよね。それとモダン・ジャズってけっこう様式のある音楽だから、聴き続けていくと型にはまったように聴こえてこなくもない。フリー・ジャズは刺激を得るためだけじゃないけど、その様式ごとぶち壊してしまった。でもharuharuyaさんはそれは好きじゃないんだね。「刺激的なフツーのジャズ」か。なかなかいい表現だね。何かあったかなぁ。コーヒー飲んで待っていてください。
お待たせしました。これはどうでしょう。テテ・モントリュー(ピアノ)、ニールス・ペデルセン(ベース)、アルバート・ヒース(ドラムス)のトリオ。この3人ならすごくストレートなモダン・ジャズだよね。
で、ここに加わるのがアンソニー・ブラクストン。これ74年のアルバムなんだけど、当時ブラクストンってアヴァンギャルドの最前線にいた人なのね。でもここでのブラクストンはフリーじゃないんだ。意外や意外オーソドックスなフレイズが連発する。
じゃあフツーじゃないか、と思うでしょ。でも違うんだな。なんと使っている楽器がコントラバス・クラリネット。クラシックのオケで時々使われてはいるけど、めったに目にすることのないとんでもなくデカくて低い楽器だ。ビ・バップ・スタンダードの「ドナ・リー」や「オーニソロジー」を「ババブブボボボボボ〜」と超低音域で吹いている。上手いとか上手くないの次元を超えた、とにかく強烈なインパクト。にもかかわらずバックのトリオがまったくフツーに伴奏しているギャップも刺激的ですよ。どうですか?
実は、このセッションにはテナー・サックスの大御所デクスター・ゴードンが入る予定だったのが急病のため参加できず、代わりに急遽ブラクストンを呼んだんだそう。だからといって対極にいるブラクストンはないだろう、と思うけど、プロデューサーも上手い演奏に慣れちゃってて、新たな刺激がほしかったのかな。