8492さん、いらっしゃいませ。
まず、日本では水野正敏のエレクトリック・ベースをフィーチャーしたピアノ・トリオ編成による、そのままズバリの『電気スタンダード・ジャズ』『同2』というアルバムが出ています。このように「電気(エレクトリック)」であることを売りにする企画のアルバムがあるぐらいなので、確かにご質問のアルバムは少ないです。
ジャズ界でエレクトリック・ベースと言えばまずジャコ・パストリアスの名が出ますが、ジャコはやっていました。ブライアン・メルヴィン(ドラムス)トリオの『スタンダーズ・ゾーン』はピアノ・トリオ編成で、ほとんどスタンダード曲です。ジャコの4ビート演奏は少なくありませんが、ピアノ・トリオかつスタンダードはこのアルバムだけですね。「枯葉」はないけど「酒バラ」はやってますよ。
意外なところでは、フュージョン/ロック系で活躍するウィル・リーが全曲ビ・バップ・スタンダードのアルバムを出しています。『バードハウス』というタイトルで、そこから想像されるようにチャーリー・パーカーの愛奏曲集です。ウィルの父親であるピアニスト、ビル・リーとビリー・ヒギンズ(ドラムス)とのトリオを中心に、ブレッカー兄弟らが参加してのビ・バップ・セッション。普段の活動からは4ビートとは無縁に思えるウィルが、全曲でベース・ランニングを聴かせます。
スタンダード曲に限定しないで、エレクトリック・ベースによる4ビート・ジャズということであれば、スティーヴ・スワロウとアンソニー・ジャクソンをチェックしてみてください。スワロウは70年代後半にアコースティックから転向。ゲイリー・バートン(ヴァイブラフォン)、ジョン・スコフィールド(ギター)、カーラ・ブレイ(ピアノ)などのグループでたくさんの録音を残していますが、独特な音色とグルーヴで、アコースティックとは全く違ったスタンスの4ビート・プレイをしています。
アンソニー・ジャクソンはフュージョン系が多いですが、ミシェル・ペトルチアーニ(ピアノ)やミシェル・カミロ(ピアノ)らのアルバムで4ビート・プレイが聴けます。アコースティック・ベースより音域が下も上も広い6弦ベースから生み出されるフレイズとグルーヴは実に独特なもの。
最近はエレ・アコ・ベース(ボディのないウッドベース型エレクトリック)を使う人も増えているようですし、だんだんアコースティックとエレクトリックの境界もなくなりつつありのではないでしょうか。