boss_fireさん、いらっしゃいませ。
まず最初に言っておきたいのは、ジャズの場合、何が「間違い」かは難しい問題で、仮にとんでもない音(どんな音だ?)を出したとしても、それがみごとにすばらしい音楽になっていることは珍しくありません。この場合、判断基準はセンスですね。
で、これとは別にホントに間違っているものもあります。でもグループ全員で同時演奏の場合(ジャズはこれが当たり前ですが)、同じ演奏は2度と不可能ですから、全体の演奏がよければ、そちらを優先させてレコード(CD)に収録することはよくあることです。だから逆に「アレ?」があるのは、名演ということなんじゃないかな?
マスターの「アレ?」盤は、まずマイルス・デイヴィスの『アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ』。この「ザ・マン・アイ・ラヴ」(テイク2)でセロニアス・モンク(ピアノ)がソロの途中で突然沈黙しちゃうのね。するとマイルスが「どうした? ソロ続けろよ」って促す感じでトランペットをちょっと吹く。で、そこからピアノのすばらしいソロがまた始まっていくんだけど、この予期せぬ展開には驚きましたね。ゾクゾクする。間違いということじゃないけど、普通の展開じゃないよね。
もう1枚はソニー・クラーク(ピアノ)の『ソニーズ・クリブ』。この中の「スピーク・ロウ」なんだけど、ジョン・コルトレーン(テナー・サックス)がソロの途中で進行を誤って、一瞬止まる。スリリングですよ、この瞬間。でも、すぐにすばらしいソロが続いてゆく。これホント、名演だなあ。
というように、こういう「アレ?」は、60年代までのレコードには珍しくないですが、今では間違えたところだけ録音し直して差し替えできるから、ほとんど聴くことができない。ちょっと残念な気もするなあ。