ヘッドホン「HA-FX700」の新商品説明会に潜入したマスターですが、会場の「JVCケンウッド丸の内ショールーム」で、ちょっと(いや、かなり)気になるモノを見つけてしまったのです。説明会会場の入口付近に置かれたウッドコーンスピーカーのコンポ。その名は「EX-A150」。実はマスターは以前お伝えした「SX-WD5KT組立キット」製作以来、ずっとウッドコーンスピーカーを愛用しているのです。というわけで、ウッドコーンには人一倍興味があるひとりではあるのですが、この「EX-A150」は初めて見ました。実はこれはビクターのオフィシャルWEBショップ「ビクターダイレクト」限定商品で、店頭には並んでいないんです。
と、なかなか実機を見ることができないにもかかわらず、これはウッドコーン搭載コンポのハイエンド(最高級グレード)商品なのね。「EX-A150」はCD/DVDプレーヤーとアンプ、そしてスピーカーでフルシステム。型番の前に付く名前は「プレミアムモデル」ですよ、「プレミアム」。いったいどんなものなんだろう? 「これ、聴かせていただけますか? 潜入取材だったんですけど…(小声)」。「説明会は終りましたし、ここはショールームなんですからご遠慮なく」とのこと。ならば「HA-FX700」と「EX-A150」の「ウッドのハイエンド繋がり」ということで、紹介してしまいましょ。こだわりもたくさん聞いてみました(もちろんふだんは誰でも試聴オーケイです)。
何がプレミアムなのか。まず、前から見ると、高級感漂うシンプルなスッキリ顔。正直、特別なところはないけど、裏に回ると(すぐ後ろを見ますよね、オーディオファンのみなさん)ちょっとびっくり。スピーカーの端子が2セットあって、それぞれケーブルが出てるのです。これは、上の端子はツイーターに、下はウーハーにそれぞれ直結という、かなり変わった構造なのでした。普通の2ウェイスピーカーなら、信号をネットワークという回路を通してツイーターとウーハーに振り分けるのですが、「EX-A150」はネットワークの回路を省いてダイレクトにアンプからそれぞれに信号を送るという方式になっています。だからアンプもツイーター駆動用とウーハー駆動用に分かれているという構造です。かなりこだわるマニアが試す、バイアンプというやつですね。アンプの核になっているのはビクターの他の商品でも高い評価を得ているデジタルアンプ「DEUS」(デウス)なんだけど、ここではそれがステレオ2台分になっているというわけ(通常のステレオモードにも切換可)。このクラスのシステムでこれはめずらしい。コンポでこれをやってしまう発想は感動ものだ。それを受けるウッドコーンスピーカーに相応のポテンシャルがあるということでもあるのだな。
見えないところにもこだわりが凝縮。外から見ると他のウッドコーンとはなんら変わらないけれど、実は内側はまるで違うのだそう。ウーハーのコーンの裏側には異方性振動板(特許7件!)というチェリー材のシートが貼付けられているし、センターキャップ奥にはメイプル材の木片吸音材が配置されているという、とことん「木」にこだわった改善が随所で行なわれている。
さらにツイーター(こちらはウッドドームです)の奥にはスプルース材による木片吸音材を配置。木片吸音材は、繊維方向が垂直ということが特許らしいです。小さな木片の繊維方向まで追い込むなんて、ちょっとこだわり過ぎなんじゃない?
こだわりはまだまだある。スピーカーキャビネットの内部には吸音材が入れられているのは多くの方がご存知でしょうが、この素材で音が大きく変わることはそれほど知られてはいないかも。一般的にはフェルトやウールなどの繊維が使われますが、ウッドコーンでは木製チップを使っています。ここではそれもグレードアップされていたのでした。以前紹介した「EX-A3」はチェリー材でしたが、ここではメイプル材を採用(これまた特許申請中)。さらに、キャビネット底部には竹でできた竹響板(これも特許申請中)と、チェリー材の響棒が組み込まれているという。つまりユニットとキャビネット内部にはコーンのカバ材の他、チェリー、メイプル、スプルース、竹というさまざまな「木」素材が使われている。ひとくくりに「木」と言ったって特性はぜんぜん違うのね。素材で音を変えるってまさに楽器的発想。オーディオって電気電子技術だけじゃないんだね。
さらに、素材のこだわりは天然モノだけじゃなかった。ツイーターのボイスコイルの素材は99.9999パーセント(9が6個並ぶ、いわゆる6N)の高純度無酸素銅(OFC)を使用。アンプはバイアンプというだけでなく、他にもさまざまなこだわりの結晶。ビクター製品ではすっかりおなじみのデジタル音源高音質化技術「K2テクノロジー」もさらに進化して搭載。また、そんなデジタル系だけでなく、アナログ的なこだわりも随所にあって、シャーシのボトムにはアークベースを設置(低重心と制振で低音の立ち上がりを改善)したり、3点支持構造のインシュレーターは真鍮を組み合わせたハイブリッド構造と、細部までのこだわりはベテランのマニアもうならせる。
なんて言うと、扱いが難しそうに思うかもしれないけど、そこは最新型。便利な機能もたくさんついている。CD/DVDプレーヤー部の前面にはUSB端子が付いていて、USBメモリーやデジタルオーディオプレーヤーを直接接続できるようになっている。しかも再生だけでなくて、USBメモリーに録音までできてしまうのにはちょっとびっくり。別売でiPodのドックもある。音へのこだわりだけでなく、利便性にも十分考慮された、至れり尽くせりの気の配りようだ。もちろん最後はビクタースタジオのエンジニアが、その「耳と感性」でチューニング。CDを作っている人が、それを聴くためのチューニングを施すわけだから、仕上げとしてはこれ以上の方法はないですよね。ウッドコーンは実際にビクタースタジオで使われているぐらいだしね(マスターのスタジオ見学)。
「EX-A150」はまさに最先端デジタル技術と、最先端アナログ加工技術の結晶だ。男心をくすぐるなあ(きっと女の人だって)。ウッドコーン派としてはちょっと熱くなり過ぎたかもしれませんが(ふぅー)、でもうんちくを語るにふさわしいものであることは確かです(買ったわけではありませんけど)。なかなか見る、そして聴く機会の少ないモデルですが、「JVCケンウッド丸の内ショールーム」に行けば、いつでも聴かせてもらえます。いい音出てます。ウッドコーンファンの方は絶対に注目ですよ。
そのうえこのショールームでは、ウッドコーン・マイスターの解説による「EX-A150」の特別試聴会も時々実施されているとのこと。ホームページでチェックして、熱いトークとすばらしい音楽を一緒に楽しんでみてはいかが?