音のこだわり 「マスターのスタジオ見学記」

第1回 「スタジオは何をするところなのか?」


第1回「スタジオとは何をするところなのか」
マスターのお話スタジオ見学記
 
カフェ会員の皆さま、こんにちは。
年末にご紹介した"K2HD CD"や、"ウッドコーンスピーカー"はお試しいただけたましたか?
多くの皆さまより共感いただいたお声をお寄せいただき、大変嬉しく思います。
皆様が上質な音楽ライフを実現できるよう微力ながらサポート情報をご提供していきます。

 
ビクタースタジオ 最近では"いい音はどこで作られているのか?"
という話に花が咲いて、常連客のとどさんやあっちゃんを連れ添って、"ビクタースタジオ"を訪れてきたので、少しお話ししよう。

私たちが聴いているすべてのCDは、スタジオなしでは存在しない。
スタジオは録音を行ない「音楽」を創る場というだけでなく、K2HD CDがビル・エヴァンスの音を瑞々しく甦らせたように、「音」を創る場でもある。CDを聴くことは、ミュージシャンの「音楽」だけでなく、スタジオの「音」も聴いているということになる。よって、スタジオの役割はたいへんに大きいわけだが、聴き手としては案外と見過ごしているような気がする。そりゃそうだ。そもそもスタジオとはどんなところで、そこで誰が何をしているのか知らないわけだから。それがわかれば、もっと「音楽」も「音」も楽しめるに違いない。

ビクタースタジオ長の高田英男氏と、エンジニアグループ長の秋元秀之氏 というわけで、リスナー代表としてJazzCafeマスターが東京・渋谷区にあるビクタースタジオを見学させていただいた。日本有数の規模と歴史を持つスタジオである。
案内はビクタースタジオ長の高田英男氏と、エンジニアグループ長の秋元秀之氏。両氏の名前はJVCの多くのアルバムで目にして(音も耳にして)いたので、私マスターはちょっと緊張ぎみ。皆さんもアルバムの裏面に Mastering~やMasterted by~などでお二人に出会っていた可能性は高い。これでひとつ楽しみ方が増えたような気がしませんか?
録音だけではないスタジオの役割
まず、スタジオとは何をしているところなのかをご説明いただいた。 ビクタースタジオの業務は、大きく3つに分けられる。
レコーディング
1.レコーディング

スタジオといえばまずレコーディング。
ミュージシャンが演奏し、エンジニアが録音するところ。ビクタースタジオには3つの大きなレコーディング・スタジオがあって、それぞれがまったく異なった特徴と個性をもっている。 具体的には、広さ、形、天井の高さ、壁の材質の構造も異なり、そして響きや用途などまるで違う。
機材もヴィンテージ・アナログからデジタル最先端までさまざまある。 詳しくは次回で紹介するが、この音楽制作環境の幅広さがビクタースタジオの大きな特徴である。その他にヴォーカル中心としたダビング・スタジオが1つ、最終的な仕上げであるミックスダウンのためのスタジオが2つある。

マスタリング
2.マスタリング

レコーディング~ミックスダウンされた音は、マスタリングという作業で最終的にCD作品としてまとめられる。
ミックスが済まされた個々の楽曲のマスター(CDならステレオ2ch)を曲順に並べ、レベルを揃え、曲間タイムを決めるといったようなCDプレス・マスター製作のための技術的作業であるだけでなく、最終的な「音づくり・音楽づくり」もここで行なわれる。
近年ではここでのプロセスがたいへん重要視されており、「マスタリング」は音楽制作の最重要ポイントとなっている。 ジャズ・ファンなら必ず耳にしている「リマスタリング」という言葉。これは同じマスター・テープの音源ではあるが、マスタリングによって以前のパッケージとは違う音=音楽に仕上げること。ここでさまざまな技術が駆使されるわけだが、JazzCafeでずっとお薦めしているK2HDコーディングもそのひとつ。マスタリングエンジニアの感性と技術力による音楽の伝わり方の違いはたいへん大きい。

オーサリング
3.オーサリング

この言葉は音楽ファンにはなじみは少ないかもしれない。オーサリングとはDVDビデオやDVDオーディオなど、映像と音楽が一緒になったメディアをつくる最終段階の作業のこと。CDの様に音だけでは無かった工程だが、これからのメディアには不可欠なプロセスである。また、音楽配信のためのエンコーディング(データ圧縮)もここで行なわれる。利便性が重視されがちな新しいメディアにも「いい音」で対応するための研究開発が積極的に行なわれている。高音質音楽配信「net K2」はここで作られている。

スタジオの音を決めるもの
ビクタースタジオ長の高田英男氏と このようにビクタースタジオでは最先端の技術と設備で、ミュージシャンのあらゆる要求に応え「いい音」を創り出している。だが、もっとも大切なものはそれを動かす「人」であると高田氏は語る。
「以前とは異なり、エンジニアのスキルは難しい機器を扱えるということではないんです。エンジニアは機材を使いこなせるのは当たり前。レーサーに例えると運転はできて当然で、いかに速く走れるかが重要。エンジニアはいかにいい音楽が創れるか、なんです。今や音楽制作のなかでのエンジニアは技術者というよりもクリエイターという位置にいるわけです。そういうエンジニアの感性と技術力がなくては、いくらいい設備と環境があっても、それだけではいい音楽は創れないのです。」
これからはCDのクレジットのエンジニアの名前をもっとよく見ることにしよう。ミュージシャン同様にお気に入りの人がきっと出てくるだろう。ジャズの世界では海外の著名なエンジニアだけが目につきがちだが、どのジャンルでもエンジニアの力は発揮されていて、個性的な音創りをしている日本のエンジニアも沢山いるのだ。
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