この新作『タイム・アンド・ザ・リヴァー』はアルバムとしては5年振り。そして15年ぶりにマーカス・ミラーをプロデューサーに迎えての作品となった。マーカスは70年代末から80年代にかけてサンボーンのバンドで活躍。プロデューサーとしても『バックストリート』(83年)や『ストレート・トゥ・ザ・ハート』(84年)、『クローズアップ』(88年)など多くのヒット作品に貢献した。今回は99年の『インサイド』以来のプロデュースである。
そのサウンドの印象はじつに落ち着いた、しかし熱いものだ。とにかくサンボーンの特徴は、その「音」である。一発のブロウで誰もがその存在を認識する。パーカッションを生かした「ア・ラ・ヴァティカル」、元タワー・オブ・パワーのラリー・ブラッグスのヴォーカルをフィーチャーしたR&B「キャント・ゲット・ネクスト・ユー」、ミシェル・ルグランの「風のささやき」をランディ・クロフォードが歌ったり、さらには(マイルス・デイヴィスが70年代に録音している)エルメート・パスコアールの「リトル・チャーチ」まで、さまざまなタイプの曲が混在するが、まったく違和感なくそれらが繋がっていくのは、その「音」があるからこそなのだ。サンボーンのアルトとピアノのデュオ「オーヴァチュア」、日本盤ボーナス・トラックの「デイドリーマー」「リトル・チャーチ」は特にそのサンボーンの「音」を全面に出したもの。もうシビレるね。
バイオグラフィーを見て、彼が今年で70歳になるということを知ってちょっと驚いた。70年代からの活動をリアルタイムで知るワタクシにとっては、確固たる自身のスタイルを変えることなく常に第一線で活躍し続けてきたということに改めて感動する。時は流れ、そしてつながっている。ああ、それで「タイム・アンド・ザ・リヴァー」なのね。と勝手に解釈するが、大きく外れてはいないだろう。この作品はサンボーンのこれまで脈々と続いてきた活動の結果としてのものであり、なおかつこれからの未来も見据えたものなのだ。
なお、ジャケットにある漢字の「川」。もちろん『リヴァー』ということなのだが、サンボーンは「3本=サンボーン」であることもちゃんとわかっているそうです。