今回紹介するのは、JiLL-Decoy association(ジルデコイ・アソシエーション)、通称「ジルデコ」の新作。ジルデコは、2002年結成。chihiRo(ヴォーカル)、kubota(ギター)、towada(ドラムス)の3人によるユニット。2006年にメジャー・デビュー、この『ジルデコ6~Just a Hunch~』が6枚目のフル・アルバムとなる。日本語のヴォーカルがのるサウンドなので、J-ポップにカテゴライズされることが多いが、ジルデコはこれまでiTunes Storeの「ジャズ」チャートで何度も1位を獲得しているし、2012年には「東京ジャズ」にも出演している。まあ、要するにポップとジャズの並立という感じか。こういったバンドの方向性は目新しいものではないが、ジルデコは特に「ジャズ度」が高い印象だ。
「INSTinct 1」と「INSTinct 2」はタイトルからわかるようにインストゥルメンタルのトラックで、「6th HUNCH」のインスト・ヴァージョン。インタールード的に入る短いトラックだが、前者ではテナー・サックスのソロ、後者はギターのソロがフィーチャーされている。どちらも4ビートのジャズだ。「6th HUNCH」にもテナー・ソロもギター・ソロも入っているので、ソロの別テイク部分を分けたものかもしれない。いずれにせよ、日本語ヴォーカルがフロントに立つとJ-ポップ的な印象が強くなってしまうが、こういう部分で「ジャズ」を強調しているわけで、やはり「ジャズ度」の高さはバンドの特徴のひとつとしているところなのだろう。
今回のアルバムで特に注目したいのは、「ソー・メイ・イット・シークレットリー・ビギン」。これはパット・メセニー・グループの楽曲のカヴァー。オリジナルはメセニー・グループが1987年に発表した『スティル・ライフ』に収録(ちなみに初出当時、日本語盤でのタイトルは「胎動」だった)。27年前の曲だけに、多くの人には新曲と同じなのだろうが、知る人は知っている名曲だ。なんとここにchihiRoによる日本語の歌詞をつけて歌っている。メセニー・グループのサウンドは風景や情景を強くイメージさせるものだけに、歌詞を付けることは相当チャレンジングなことだったと想像できる。また、ソロもギターとピアノというメセニー・グループと同じ構成だけに、オリジナルを知る人には特に聴きどころがたっぷり。新鮮な解釈が楽しめる。