熱帯JAZZ楽団、今回の『XVI ~Easy Lover~』は16枚目のアルバム。これまで国内外を問わず活躍してきた世界有数のラテン・ジャズ・ビッグ・バンドだけに、聴く前から「絶対間違いなし」のわくわく気分になってしまうのだけれど、実際聴けばやっぱりすばらしい演奏なのだな。3年ぶりとなった今回のアルバムはいつもどおりとにかく熱い、圧倒的なラテン・ジャズを大迫力のサウンドで聴かせてくれる。
毎回意表をついたカヴァー曲も楽しみだが、今回のタイトル曲「イージー・ラヴァー」はフィリップ・ベイリー&フィル・コリンズの84年のヒット曲カヴァー。「君の瞳に恋してる」は、今やボーイズ・タウン・ギャングのヒット曲であること以上に知られたポップス・スタンダードだ。「シンクロニシティ・ワン」はザ・ポリス、「マルタ島の砂」はハーブ・アルパート、「デイ・トリッパー」はビートルズと、時代もタイプも実に幅広い。つまり多くの人が楽しめるということだ。
1994年にカルロス菅野が企画した「トロピカル・ジャズ・オールスターズ」のライヴが「熱帯JAZZ楽団」誕生のきっかけというから、今年は「熱帯」誕生20年の年になる(「結成」して19年)。これだけ長く活動してこられたのは、カルロス菅野のリーダーシップと豊富な音楽のアイディア、メンバーの結束、実力、音楽性の高さはもちろんなんだけど、グループのコンセプトが「音楽はエンターテイメントだ!」というところが大きいと思う。どんなジャンルのファンの人でも、どんな世代の人でも、すべてのオーディエンスを熱狂させてしまおうという音楽の楽しさと、旺盛なサービス精神があふれ出ているものね。ファンがどんどん世界中に増えていくのは当然なのだな。すべての音楽ファンにおすすめします。