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VICTOR JAZZ CAFE

2010年02月

ラスマス・フェイバー・プレゼンツ・プラチナ・ジャズ 〜アニメ・スタンダード Vol.1〜

2009.11.25 VICP-64778

Artist Review アーティストレビュー

今月の新譜は、『ラスマス・フェイバー・プレゼンツ・プラチナ・ジャズ 〜アニメ・スタンダード Vol.1〜』という長いタイトル。内容を一言でいうと、スウェーデン人であるラスマス・フェイバーがプロデュースした「プラチナ・ジャズ」というジャズのセッション・アルバムなんだけど、今回そこで演奏されているのはなんと日本のアニメ曲という、一風変わった企画なんだ。

「アニメ曲をジャズにする」という企画は、(意外に思う人がいるかもしれないが)実は昔から内外ともにけっこうある。今や完全にジャズ・スタンダードになっている「いつか王子様が」と「星に願いを」は、それぞれディズニー・アニメ映画「白雪姫」、「ピノキオ」がオリジナルだ。他にもビル・エヴァンスが『トリオ'64』などで「リトル・ルル」という曲を演奏しているが、これは同名の短編アニメ・シリーズのテーマ・ソング。「スヌーピーとチャーリー・ブラウン」のテーマはオリジナルがモダン・ジャズだからそのままなんだけど、ウィントン・マルサリスらがとり上げている。

日本では「ルパンIII世」「スタジオジブリ作品」など有名曲はもちろん、「銀河鉄道999」「明日のジョー」「巨人の星」「ドラえもん」「マジンガーZ」、さらには「天才バカボン」まで、(さすがアニメ大国)たくさんのアニメ曲がジャズ・アレンジされて世に出ている。

というわけで、「アニメ+ジャズ」という企画そのものは珍しくはないのだが、これまでのものとは『プラチナ・ジャズ』はちょっと違う。どこが? まず、1)スウェーデンのミュージシャンによる正統派モダン・ジャズであること。そして、2)題材の曲が新しいこと。

ラスマス・フェイバーは、1979年スウェーデン生まれのプロデューサー、ピアニスト、ソングライター、アレンジャーでDJ。スウェーデンのポップスやジャズのプロデュースを手がけていたが、2002年にデビュー・シングル「Never Felt So Fly」をリリースし、ハウス・ミュージックの世界に進出。2004年に日本で大ブレイクし、現在のハウス・シーンのパイオニアの一人として注目されている存在。

フェイバーはここではプロデューサー/共同アレンジャー/ミキサーというクレジットで、演奏はスウェーデンのジャズ・ミュージシャンたちによるもの。ピアノ・トリオを核に、曲によってサックスやヴォーカル、ホーン・セクションが入ったりと変化に富んだアレンジが施されている。メインのトリオは、マーティン・パーソン (ピアノ/アレンジ:77年生まれ) 、マーティン・ホーパー(ベース:78年生まれ) 、オーラ・ボッゼン(ドラム: 71年生まれ)という顔ぶれだが、彼らの演奏は実に瑞々しい。また、他のメンバーも魅力的で、スウェーデン・ジャズのレベルの高さがうかがえるセッションとなっている。

演奏されているのはラスマス・フェイバーが選曲した日本のアニメ曲。曲目は下記のとおり。出典とオリジナルの発表年も調べて入れてみました。

1.ハレ晴レユカイ(「涼宮ハルヒの憂鬱」より)2006年
2.ハッピー☆マテリアル(「魔法先生ネギま!」より)2005年
3.Genesis of Aquarion(「創聖のアクエリオン」より)2005年
4.星間飛行(「マクロスFrontier」より)2008年
5.水の証(「機動戦士ガンダムSEED」より)2002年
6.コスモスに君と(「伝説巨神イデオン」より)1980年
7.君をのせて(「天空の城ラピュタ」より)1986年
8.そらのむこう(「ひぐらしのなく頃に解」より)2006年
9.時の記憶(「ぼくの地球を守って」より)1993年
10.Thanatos - If I Can't Be Yours -(「新世紀エヴァンゲリオン」より)1997年
11.オネアミスの翼〜メイン・テーマ(「王立宇宙軍 オネアミスの翼」より)1987年
12.光の天使(「幻魔大戦」より)1983年
13.夢色のスプーン(「スプーンおばさん」より)1983年
14.炎のたからもの(「ルパン三世 -カリオストロの城」より)1979年
15.ガーネット(「時をかける少女」より)2006年
16.Doll(「ガンスリンガー・ガール」より)2003年
17.空へ…(「ロミオの青い空」より)1995年
18.Voices(「マクロスプラス」より) 1994年

いちばん古いもので1979年、最新で2008年発表。先に例としてあげたものとは明らかに世代が異なっているのがおわかりいただけますね。ブックレットにあるフェイバーのインタヴューを読むと、彼はかなりの日本アニメ・オタクであることがわかるが、それにしてもこの選曲は新し過ぎ(?)だ。ここ数年の曲もかなりあり、ジャズで言うところの「スタンダード」(広く知られて、多くのミュージシャンが演奏する曲)にはあてはまらない。ワタクシ、マスターは正直なところ原曲を知っていたのは3曲だけなので(決してアニメ嫌いではないのだが…)、「アニメ・スタンダード」という表記には違和感を感じないわけではないけど、これは「スタンダード・ジャズのように演奏する」という意味なんだろう(実はものすごく有名曲ばかりで、たまたまマスターが想定リスナーから外れていた…だったらゴメンナサイ)。

まあ、そんなわけでスタンダード・ジャズのおもしろさのひとつである「原曲をいかにアレンジするか」というところはわかんないところもあるど、趣味のよいメインストリーム・ジャズとしてとても楽しめたのも事実(つまり、彼らのオリジナル曲として聴いたわけです)。

ヴォーカル(もともと英語歌詞あり)は3曲に入っているが、最近のアニメ・ソングはヒーロー名を連呼するようなものではないので、どれもきっちりジャズ・チューンになっている。「Genesis of Aquarion」では英語の歌詞に混じって日本語で「愛してる」と歌っているのは(原曲がそうだからだけど)とても印象的だ。また、「ハッピー☆マテリアル」が『サキソフォン・コロッサス』の「セント・トーマス」風だったり、「そらのむこう」がオスカー・ピーターソン風だったりと、ジャズ・マニアへの「くすぐり」もそこかしこに散りばめられている。

この顔ぶれなら「アニメ」でくくらなくても、すばらしいジャズ・アルバムになっただろうけど、やはりフェイバーの「アニメ好き」がモチベーションを高め、さらに勢いをつけたであろうことは想像できる。だから原曲を知っている人はきっともっともっと楽しめるはず。でもこれ(繰り返すけど)、普通のオリジナル・ジャズ・アルバムとして聴いても十分楽しめますよ。あっ、もしかして最近のアニメばかりをとり上げたのは、そこを狙っていたの?(ってのは考え過ぎですかね)。

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