2009年12月
小林香織『LUV SAX』
2009.12.16 VICJ-61614

女性サックス奏者、小林香織は学生時代から活動を始めた実力派。2005年のアルバム・デビュー当時は「ジャズ・アイドル」とも呼ばれましたが、新作『LUV SAX』は早くも5枚めのアルバム。ルックスだけではないのです。これまではほとんどオリジナル曲を演奏してきましたが、今回はJ-POPカヴァー集。というわけで、これまでとは一味違うサウンドとなっています。
J-POPカヴァーといっても、とり上げた曲は時代的にも音楽的も幅広く、選曲方針がすぐには推測できないくらいのにぎやかさ。バックはギターを中心に、プログラミングされたシンプルな編成・構成で、サックスを全面に押し出したアレンジとなっています。メロディも原曲を崩すようなところはほとんどないストレートな演奏。また、バックがまったく目立たない「吹きっぱなし」状態なので、小林香織のサックスをたっぷりと味わい尽くしてもらおうということなのでしょう。ここでのサックスは完全にヴォーカルの位置づけ、つまり小林香織がサックスで「歌う」アルバムなのです。
ところで、小林香織は1981年生まれ。各曲の発表年を見ると、彼女がリアルタイムでは聴いていないものがほとんどです。彼女の世代には新しい発見を、オヤジ(失礼、オトナ)世代には多少の懐かしさも、というところでしょうか。では1曲ずつ聴いていきましょう。
1.Story
オリジナルは05年のAIのヒット曲。ふだんはジャズばかり聴いているマスターでも、いろんなところで耳にしているなあ。原曲の印象的なメロディを素直に生かしたバラード。
2.もらい泣き
原曲は02年発表一青窈のファースト・シングル。サックス多重録音によるバッキングも聴けます。
3.Missing
久保田利伸の86年発表曲。もう20年以上前の曲なのね。
4.Sweet Memories
さらに前、83年の大ヒット曲。ここではアコースティック・ギターとのデュオでの演奏。この曲はもはやポップス・スタンダードと言ってもいいぐらいで、とても多くのカヴァーが発表されています。上田正樹、山崎まさよしら男性シンガーにもカヴァーされているほど。
5.メリー・ジェーン
つのだ★ひろが70年代初頭に発表したバラード。飛び抜けてヒットになったというわけではない曲ですが、じわりじわりと浸透、これも今ではスタンダード。この曲だけバックは「小林香織バンド」とクレジットされていて、ヘヴィーなギター・サウンドをフィーチャーした、原曲とはけっこう離れたロック・アレンジとなっています。
6.元気を出して
竹内まりやの88年のヒット。もともとは84年に薬師丸ひろ子へ提供した曲のセルフ・カヴァー(どうでもいいか)。
7.PRIDE
96年発表の今井美樹の大ヒット曲。これまた多くのヴォーカル・カヴァーがあります。
8.I Love You 尾崎豊の曲ではなく(もちろんジャズ・スタンダードの同名曲でもなく)、81年のオフコースのシングル曲。作詞作曲は小田和正。
9.Goodby My Love
この曲を知っている人はかなりオトナですよね。作詞・なかにし礼、作曲・平尾昌晃による74年のアン・ルイスのヒット曲ですから。その後、テレサ・テンがカヴァーしたのも(オトナには)有名。
10.Hello My LUV
前の曲に引っ掛けたタイトルのこの曲のみ、オリジナルのファンクなインスト・ナンバー。サブタイトルに「エンディング・セッション」とあるように、スタジオでのジャム・セッションのようです。ここまでの比較的大人しい演奏とは一転、ヘヴィーに盛り上がってます。
11.中央線
96年のTHE BOOMの作品。近年も矢野顕子がカヴァーするなど、知る人ぞ知る名曲。ここでは後半に薄くストリングス風シンセが入ってくるだけの(ほぼ)無伴奏のサックス・ソロ。アドリブ・ソロは無しで淡々とメロディを歌って終る。これはアンコール、ですね。
といった全11曲。こうやって聴いてくると、この選曲は「カラオケ人気曲集」にも思えなくもない。これは「聴く」名曲集でもあり、「歌う」名曲集でもあるのね。となれば、一緒に歌ってみるのもありか、なんて思ったり。
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