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VICTOR JAZZ CAFE

2009年08月

SALT & SUGAR 『Concerts II』 2009年8月

2009.08.19 VICL-63374

Artist Review アーティストレビュー

この「SALT & SUGAR」は、その名のとおり「シオ」ノヤと「サトウ」の2人組。基本的に塩谷哲のアコースティック・ピアノと佐藤竹善のヴォーカルだけで演奏されるユニットだ。1995年結成。当時塩谷はオルケスタ・デ・ラ・ルスから独立しソロ活動を始めた頃、一方の佐藤もSING LIKE TALKING(グループ)と並行してソロ活動を始めた時期だった。ふたりとも超のつく実力派だけに、その内容は充実そのもの。ふたりが軸足を置くポップスに、それぞれの持つ幅広い音楽性が加えられたサウンドは実に個性的だ。

SALT & SUGARは96年にライヴ・アルバム『Concerts』をリリースしていて、今回は13年ぶりとなるその2枚め。ブランクは長いが、ふたりはその後継続して活動を続けてきており、ここには97〜2008年のライヴ音源から厳選された13曲が収録されている。いわば活動の記録であり、ベスト・アルバムとも言えるもの。もちろん12年の間に変化はあったのだろうが、ここで聴ける音に時の流れは感じない。1枚の新作アルバムとして聴いても充実した内容となっている(ちなみに新作スタジオ録音盤がユニバーサルミュージックから同時発売される)。

このアルバムから一番感じられることをひと言で言えば、「音楽の喜び」だ。(もちろんその裏には苦しみもあるのだろうが、)それがひしひしと伝わって来るから、聴き手が楽しくないはずはない。ヴォーカルとピアノは編成としては最小限だが、その一方、最大限の自由ももたらしてくれる。その時、歌いたいように歌え、弾きたいように弾くことが許される。つまりその場その場のお互いのやりとりが音楽を作っているんだな。これはジャズの特徴でもある(ジャズではインタープレイと呼ぶね)。というわけで、題材はポップスのカヴァー中心だけど、ジャズっぽさはかなり濃い。塩谷のピアノもジャジーなサウンドを強く押し出している。そういえばポップスの世界にはこういう編成でやっている人はあまりいないなあ。ポップスでありジャズであり、さらにいろんな要素が詰め込まれているクロスオーヴァーな立ち位置ながら、すべてが「SALT & SUGAR」のサウンドとして強い個性を持っているところがすばらしい。単なるセッションとはぜんぜん違うのだ。

ネタは佐藤の好みかアメリカAOR系のカヴァーが多いが、オリジナルや日本語の曲もあり、ふたりだけの演奏にもかかわらず、最後までどんどん引き込まれていく。ライヴとは思えないほどのすばらしい完成度だ。

*収録曲について

1.Diary 96年リリースのSALT & SUGARの最初のシングルのタイトル曲。つまりデビュー曲。塩谷の作詞(日本語)、佐藤の作曲。ベスト盤としてオープニングにふさわしい。97年録音。

2.Mornin' 1983年のアル・ジャロウのヒット曲。佐藤のスキャットはなかなか聴かせる。

3.Earthbound 97年末にデビューした英国のヴォーカリスト、コナー・リーヴスのファースト・アルバムに収録されていた曲。このテイクは99年の録音だからかなり早くとり上げたことになる。

4.Love' In Need Of Love Today スティーヴィー・ワンダー76年の大名盤『キー・オブ・ライフ』に収録されていた名曲(邦題「ある愛の伝説」)。MCで歌詞の内容をじっくりと紹介していて楽しい(MC収録はこのトラックだけ)。佐藤はこの曲をソロ・アルバムでもとり上げていた。

5.処女航海'99 ハービー・ハンコックの有名なジャズ曲ではなく、なかにし礼・作詞、服部克久・作曲の作品。これは服部克久のアルバム『音楽畑16』に収録されていた曲で、そのヴォーカルは佐藤だった。

6.Heal Our Land 南アフリカ出身のギタリスト/ヴォーカリスト、ジョナサン・バトラーの90年の作品。この演奏にはパーカッションも加わっている。

7.Sweet Love R&Bシンガー、アニタ・ベイカーの87年のヒット曲。こうして見てくると選曲は佐藤が主導のようですね。

8.The Flame In My Soul 佐藤作曲の、日本テレビ系ドラマ「ビューティー 7」のための音楽。テレビ放送は01年で、これは04年の録音だから、タイムリーということではなく、気に入っているのでしょう。

9.Piano Man ビリー・ジョエルの73年の大ヒット曲ですね。ハーモニカも入ってとても楽しい。

10.Marzipan マニアックな人気があるAORシンガー、エリック・タッグの82年発表曲。佐藤はソロ・アルバムでもこれまでエリック・タッグの曲を2曲とり上げてきており、かなりのタッグ・フリークと思われますね。

11.Old Photograph アコースティック・ベースを加え、ぐっとジャジーなサウンドで。渡辺貞夫の作曲。これはもともと70年代に作られたインスト・ナンバーだったが、91年の『スウィート・ディール』で歌詞が付けられウォーレン・ウィービーが歌った。幅の広い選曲が楽しい。

12.もみの木 塩谷の作曲。SALT & SUGARのデビュー・シングル『Diary』のカップリング曲だった。その後、作詞の吉田美奈子も自身のアルバムで歌った。

13.Have Yourself A Merry Little Christmas 最後はクリスマス・ソング。実はSALT & SUGARのライヴは、毎年12月に行われる塩谷「Saltish Night」コンサートの一部として行われている。彼らにとってもファンにとっても、活動記録のアルバムとしてはクリスマス・ソングはやはり外せないものなのでしょう。

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