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VICTOR JAZZ CAFE

2009年07月

ソフィー・ミルマン『テイク・ラブ・イージー』2009年7月

2009.07.22 VICJ-61606

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Artist Review アーティストレビュー

2006年の『ソフィー・ミルマン』(04年録音)での日本デビューから3年。着実に人気を得て、ソフィー・ミルマンは日本でも名前が広く知られ、2度の来日公演も大盛況と、あっという間に「新人」ではなくなった(バイオグラフィーは以前のインタヴューに詳しいのでそちらをご覧ください)。この『テイク・ラヴ・イージー』は3枚めのアルバム。よりオトナになったというか、1枚ごとに成長してきた印象を受けるよね。

ヴォーカリストに限らないけど、3枚めともなると、それまでとはちょっと違う方向に進めてみたくなるものだし、実際突然イメージ・チェンジしてしまうことはありがちだ。だからその先の方向性を印象づけるのも、このあたりが勝負どころという感じがするんだけど、今回もこれまでの2作と基本的には同じ路線での展開だ。ジャズ・スタンダードを中心にして、そこにもともとジャズ系じゃない曲をジャズにアレンジして数曲入れるという構成。ヴォーカルはインストと違って、アドリブ・ソロをやるわけではないから、同じ路線でやり続けるのはイメージ・チェンジするよりもむしろたいへんだなのだと思う(ネタ探しもね)が、これでミルマンのスタイルはしっかりと固まって印象づけられた。

今回もジャズ・スタンダードの選曲はど真ん中の有名曲、そうじゃない方はちょっとおもしろい選曲で楽しませてくれている。このスパイスの効かせ方がミルマンのアルバムのおもしろいところだね。出所の違ういろんな曲が入っているけれど、有名ジャズ・スタンダードもポップス曲も違和感なく並列している。全部ちゃんと「ソフィー・ミルマンの歌」になっている。アレンジのうまさもあるけど、何と言っても歌のうまさがそれを成功させているんだね。

【収録曲について】

1.ビューティフル・ラヴ
イントロなしでいきなりベースとのデュエットで始まって、アップテンポでぐいぐい押しまくる力強い歌声だ。こんなにパワフルな人だったっけ?といきなり引き込まれてしまう。この曲は多くの名演が残されているが、ミルマンのこの演奏も将来そのリストに連なるに違いない。

2.テイク・ラヴ・イージー
フレディ・グリーンばりのギターの4ビート・カッティングが印象的な1曲。一転してリラックスした雰囲気になり前曲とのコントラストが際立つ。デューク・エリントン作曲。

3.あなたに夢中
これは邦題よりも「アイ・コンセントレイト・オン・ユー」の方が通りがいいかも。コール・ポーターのミュージカル曲。アコースティックな16ビートのアレンジ。ウェッセル・アンダーソンのアルト・サックスが大きくフィーチャーされる。

4.デイ・イン、デイ・アウト
「いそしぎ」の作曲で知られるジョニー・マンデル作曲のスタンダード。ホーン・アンサンブルを従え、サンバ風で始まり、2コーラスめからアップ・テンポの4ビートになる教科書的アレンジ。アルト・サックス・ソロは軽快な正調ビ・バップ。という伝統的直球勝負なのだが、古くさいどころか、新鮮に感じられるのはなぜだろう。伸び伸びとした歌声がすばらしい。

5.ビー・クール
今や、ジャズでも多くカヴァーされるようになったジョニ・ミッチェルの作品。

6.マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ
アコースティック・ギターのアルペジオが印象的。そこにからむフェンダー・ローズ(エレクトリック・ピアノ)とアコーディオンの響きも新鮮だ。超有名スタンダードだけに、アレンジに凝って、数多くのヴァージョンと差別化を図ろうということだろう。結果は大成功だ。

7.アイ・キャント・メイク・ユー・ラヴ・ミー
1991年にボニー・レイットが発表したバラード。後にジョージ・マイケルもカヴァーしているポップスの隠れた人気曲。また、サックス奏者のキャンディ・ダルファーもカヴァーしている。

8.ザット・イズ・ラヴ
このアルバムでほとんどの曲でバックを務めるピアニスト、ポール・ショローフェルのオリジナル。作曲者自身のソロが大きくフィーチャーされる。

9.ラヴ・フォー・セール
コール・ポーター作曲の大スタンダード。リー・モーガンの「サイドワインダー」みたいなファンキーな味付けがユニークだ。

10.アイム・オン・ファイア
ブルース・スプリングスティーンのヒット曲。80年代を代表するロック・アルバム『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』に収録されていた。「ラヴ・フォー・セール」に続いてもなんの違和感もないジャズになっているから、原曲を知っている人ほどびっくりしてしまうだろうね。

11.トリステ
ボサ・ノヴァの創始者のひとり、アントニオ・カルロス・ジョビンの名曲。ここはひねらずボサ・ノヴァで。さらにフルートとフリューゲル・ホーンなどやわらかい響きの管楽器によるアンサンブルがバックを支えていて、ジョビンへの敬意が表されているよう。

12.恋人と別れる50の方法
ポール・サイモンの1975年作品『時の流れに(Still Crazy After All These Years)』に収録されていた曲。これをジャズでとり上げるのは珍しい。途中からラテン風のビートになり、まるで別の曲のように変わるアレンジがおもしろい。終盤ミルマンは迫力のあるスキャットを聞かせる。

13.ホエア・ドウ・ユー・スタート?
4.の「デイ・イン、デイ・アウト」と同じジョニー・マンデルの作品。ピアノだけをバックに始まり、2コーラスめからはリズム・セクションが入ってテナー・サックスがからむバラード。しっとりと歌い上げている。

14.ダウン・ウィズ・ラヴ
ハロルド・アーレン作曲の1930年代のミュージカル・ナンバー。ジュディ・ガーランドの歌がよく知られている。また、2003年に映画『恋は邪魔者』のテーマ曲にも使われている名曲。アップテンポでピアノ・トリオが軽快に疾走するアレンジが気持ちいい。

15.ザ・ベスト・イズ・イェット・トゥ・カム
サイ・コールマン作曲。60年代にフランク・シナトラが歌ったヴァージョンがよく知られるスタンダード。ここでは<デュエット・ウィズ・マイケル・ケースハマー>とサブ・タイトルが付いている。ケースハマーはドイツ出身、現在カナダで活躍するピアニストで、時にヴォーカリストでもある。ここではミルマンと掛け合いでたっぷりと歌い、たっぷりとピアノも聞かせる。ミルマンよりもむしろケースハマーが主役と言えるトラック。ケースハマーはこの曲だけに参加していて、この曲は日本盤のみのボーナス・トラックなんだけど、むしろカナダの人が欲しがるトラックなんじゃない?
今回ボーナス・トラックは2曲あるけど、どちらも「オマケ」じゃないクオリティですよ。

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