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VICTOR JAZZ CAFE

2009年06月

熱帯JAZZ楽団『熱帯JAZZ楽団 XIII 〜Fantasy〜』2009年6月

2009.07.01 VICJ-61604

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Artist Review アーティストレビュー

結成14年でなんと13枚目! これほど堅調にアルバムをリリースし続けているジャズ・グループは、近ごろ海外を見ても思いつかない。当JazzCafeでも新作が出るたびに紹介してきているので、その絶好調ぶりはみなさんも感じていらっしゃると思います。「熱帯」のバイオグラフィーはこれまでも紹介してきているのでそちらを読んでいただくことにして、今回はちょっと見方を変えてご紹介。

「熱帯JAZZ楽団」(以下「熱帯」)というバンド名ですが、英語での名前は何というかご存知ですか? 正解は「Tropical Jazz Big Band」。なんだそのまんまじゃないの、というところですが、日本名にはない「Big」がついている。音を聴いたことがある人には説明の必要はないんだけど、「熱帯」は「ビッグ・バンド」なんです。

この「ビッグ・バンド」というのは、ジャズにおいては単に「大編成バンド」という意味ではなく、「ビッグ・バンド」という名の定型編成を指します。基本編成はトランペット4、サックス5(アルト2、テナー2、バリトン1)、トロンボーン4(バス・トロンボーン1含む)、ギター、ピアノ、ベース、ドラム各1の計17人(確かに字面通り大きいバンドではあります)。別名は「フル・バンド」(これが目一杯ということなのかな?)。ギターが入らなかったり、ホーンの持ち替えで別の楽器が入る場合もありますが、昔から基本はこれなんです。

「熱帯」は17人編成。トランペット4、サックス5、トロンボーン3と、トロンボーンがひとり少ない代わりにパーカッションが2でギターは無しという編成になっています。まあ、リーダーがパーカッション奏者でラテン・ジャズをやるのですから、普通のビッグ・バンドとはもっと違ってもよさそうなものですが、この編成からわかるように基本はしっかりと「ジャズ・ビッグ・バンド」なのです。プレイヤーもラテン専門という人ばかりではなく、ジャズ系のスターたちも並んでいる。つまり、ビッグ・バンド・ジャズの伝統的な魅力をまずはがっちりと押さえているわけ。その上でたっぷりとラテンの要素を詰め込んでいる。ここが「熱帯」の魅力、幅広い人気の理由のひとつですね。

前置きがすごーく長くなりましたが、何を言いたいかというと、「熱帯」は世界でも有数の「ジャズ・ビッグ・バンド」ということ。大編成ラテン・バンドとして聴いていた方は、ジャズのビッグ・バンドとして聴き直してみてください。また違って聴こえるかもしれません。

まわりを見回すと多くのジャズ・ビッグ・バンドは伝統的な形式に縛られているのか、どうも新鮮味に乏しい気がする。その点「熱帯」は、こだわりのない(あるんだろうけど、感じさせないほど)幅広いジャンルの名曲・ヒット曲を積極的にレパートリーに取り入れ、常に新しさと、ちょっとした驚きを提供し続けてくれている。もともとビッグ・バンドは、その昔はダンス音楽を演奏するバンドだったわけだし、そこには流行のヒット曲カヴァーのレパートリーやエンターテインメント魂が不可欠だったはず。そう考えると、実は「熱帯」の方がよっぽどビッグ・バンドの伝統に則っているのかな、とも思いますね。

リーダーのカルロス菅野は「オルケスタ・デ・ラ・ルス」の元リーダー。デ・ラ・ルスは日本人バンドでありながら、全米ビル・ボード誌ラテン・チャート1位も獲った世界一のサルサ・バンド。そのカルロスがデ・ラ・ルス脱退後に結成したのがこの「熱帯」。類例のないビッグ・バンドとしてコンセプトを練り上げ、もう最初から世界を視野に入れていたのでしょう。すでにアメリカでもアルバムが3枚リリースされており、今後世界からもっと注目が集まるに違いありません。新作『Fantasy』には、ますますそう感じさせるに十分な勢いがいっぱい詰まっています。

*収録曲について ヒット曲のカヴァーからオリジナルまで、今回も(節操なく?)さまざまな題材をとり上げていますね。幅は広いですが、いずれも(もうすっかり定着した)熱くてダンサブルでスリリングな「熱帯サウンド」が全開です。

1)アルバム・タイトル曲「ファンタジー」は、アース・ウィンド&ファイアのディスコ・ヒット。初リリース当時の邦題が「宇宙のファンタジー」と知っている人は「熱帯」の平均年齢世代かな。

2)「反逆のテーマ」はテレビドラマ・シリーズ「特別狙撃隊S.W.A.T.」のテーマ曲。1970年代半ばに東京ローカルで放送されていた番組なので、広く知られていないかもしれませんが、アメリカでは曲はヒットして当時全米チャートNo.1となったそうです。

3)「ウォーク・ドント・ラン」はヴェンチャーズの演奏がとても有名ですが、作曲とオリジナルはジャズ・ギタリストのジョニー・スミスです。

4)「サニー」は60年代半ばのポップスのヒット曲で、シンガー・ソングライターのボビー・ヘブがオリジナル。でもジャズ・ファンにはオリジナルよりも、例えばウェス・モンゴメリーなどのカヴァー・ヴァージョンの方がよく知られているのではないでしょうか。でもジャズに限らず、広いジャンルでカヴァーされ続けている名曲で、ヘブ本人(現役!)も2005年にセルフ・カヴァーを発表しているほどです。ここではカルロスが歌います。

5)「リズム・イズ・ゴナ・ゲット・ユー」はグロリア・エステファン&マイアミ・サウンド・マシーンのヒット曲。曲名を知らなくても「オエーオエーオ…」というかけ声(?)はきっと聴いたことがあると思います。「熱帯」もみんなで歌ってます。アラフォー世代にはきっと懐かしい87年のヒット曲。

6)ジャズではわりととり上げられるヘンリー・マンシーニの「シャレード」。オリジナルは同名映画のテーマ音楽です。ここでは映画を知っている人には違和感ありありの、アップテンポの4ビート中心で演奏されます(オリジナルはゆったりしてる)。だからおもしろいんだけど。

7)「ハイ・ジャック」はピアノの森村献のオリジナル。いかにものビッグ・バンド・アンサンブルがとても印象的だけど、ビートはガチガチのラテンで。自身のソロも大フィーチャー。

8)「エレクトリック・シティ」は、ザ・チック・コリア・エレクトリック・バンドのファースト・アルバムに収録されていた曲。そのエレクトリック・バンドは、シンセサイザーとシーケンサーを大胆に使って、最小の編成で最大のサウンドを出すのが「売り」だった。それを「熱帯」はもちろん全部「生」で演奏する。いわば対極コンセプトは原曲を知っているともっと楽しめるかも。おもしろいな、これ。

9)ラストの「セルフ・ポートレート」はトロンボーンの中路英明のオリジナル。ゆったりとしたテンポで、ジャコ・パストリアス・ビッグ・バンドをちらりと思わせる斬新なハーモニーが美しい。

10)ボーナス・トラックは「サニー」のインスト・ヴァージョンというか、いわゆる「カラオケ」。カルロスの代わりにあなたが「熱帯」をリードして歌ってね、というもの。これ歌ってみましたが、実に気持ちいいです。だって、「生」ビッグ・バンド(それもこんなにかっこいいバンド)をバックにして歌えるカラオケってないよね。リーダー、カルロス菅野の気持ちがわかった気がする。こんなの生でやったらきっとやめられないですよ。08年に「熱帯」をバックにしたヴォーカル・アルバムを出したけど、実は最初からそっちを狙っていたりして…。

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