Q132 ID maymei5yさんの質問 2015年9月1日
ジャズのレコード・ジャケットにはかっこいいものが多いけど、特にブルーノート・レーベルが気に入ってます。どんな人が作っているの?
maymei5yさん
いらっしゃいませ。
maymei5yさんはかなりのジャズ・ファンとお見受けします。ブルーノート・レーベルのジャケットはたしかにカッコいいものが多いですよね。 ブルーノート・レコード(レーベル)は歴史が古く、1939年に創設されました。その当時はまだSPレコードの時代で、数枚のレコードをセットにしてジャケット(表紙)をつけた「アルバム」は特殊なセットものという形であり、一般的である「1枚もの(シングル盤)」には基本的にジャケットはありませんでした。その後、10インチ(25センチ)LPの時代になりジャケットが作られ、ジャケットも「音楽パッケージ」の要素として重要視されるようになります。1950年代後半に12インチ(30センチ)LPの時代となるわけですが、現在目にするCDのジャケットは、ブルーノートをはじめ、ほとんどが12インチLPレコードのジャケットを使っています。ですから多くの人にとってブルーノートのレコード・ジャケットとは12インチLP時代という認識だと思いますので、その時代に絞って説明します。
ブルーノートのジャケット・デザインをしたのは、リード・マイルズ(Reid Miles:1927〜93)というデザイナーです。マイルズはブルーノートの前任デザイナーのアシスタントを経て、1956年からデザインを手がけます。マイルズのデザインの特徴は、文字と写真のユニークな使い方と言えます。文字もデザインのパーツと捉え、可読性よりも並び方を重視した配置や、図形的に扱ったりととても斬新です。また、写真の使い方の特徴は大胆なトリミング(部分的使用)です。その両方がよく表れた例として『レット・フリーダム・リング』と『AT's・デライト』を紹介します。どちらも図形的な巨大な文字と、大胆なトリミングの写真が使われています。じつにかっこいいですね。後者は色使いも大胆です。この色使いもマイルズの特徴のひとつ。強烈なインパクトがありますが、よく見るとオレンジと黒の2色しか使っていません。印刷経費の制約を逆手にとっているとも見えます。これもすぐれたデザインの技術ですね。
また、文字を絵柄にしてしまった『イッツ・タイム』など、ほかにもマイルズには特徴的なスタイルがありますが、これらは今みるとジャズのジャケットではよくあるデザインにみえるかもしれません。でもこれらはみなマイルズが作り出したものなのです。優れたデザインゆえ、多くのデザイナーが「引用」するなどしてスタンダードになったということですね。マイルズはブルーノートで、創業者のアルフレッド・ライオンが引退する1967年ごろまでデザインを続け、多くの傑作ジャケットを残しました。なお、ブルーノートは10インチLP時代にも優れたデザインのものは多く、それらはポール・ベーコンら、優れたデザイナーが手がけていましたが、それはまた別の機会に。

1. ジャッキー・マクリーン『Let Freedom Ring』(Blue Note)

2. アート・テイラー『AT's Delight』(Blue Note)

3. ジャッキー・マクリーン『It's Time』(Blue Note)