Q122 ID sawaginさんの質問 2014年11月4日
モダン・ジャズは全部アコースティック(生)の楽器なの?
sawaginさん
いらっしゃいませ。
いわゆるモダン・ジャズ時代の楽器はアコースティック楽器がメインです。(アコースティックに対する)エレクトリック楽器が作られる以前からの歴史があり、その流れをくんでいるわけですから、まあ当然といえば当然です。1960年代後半、ロック台頭の影響でジャズの世界にもエレクトリック・ギターやエレクトリック・ベースが導入され、それらはモダン・ジャズと呼ばれなかったことをみても、モダン・ジャズはやっぱりアコースティックなイメージですよね。でも、最初に「メイン」と書いて、「すべて」としなかったのは理由があります。モダン・ジャズでもエレクトリック楽器は使われているからです。
まずは、ギター。さまざまに加工された一般的“エレキ・ギター“の音のイメージに比べると、ジャズ・ギターの音色はとても”生“な感じもしますが、ウェス・モンゴメリーにしろ、ケニー・バレルだって、アンプがなければあの音は出ません。そもそもギターはエレクトリック・ギターが発明されたからこそモダン・ジャズで使われるようになった楽器なのです。エレクトリック・ギターは1930年代前半に”発明“されました。そして1930年代の後半、チャーリー・クリスチャンがジャズの世界に持ち込んだのです。それ以前、ギターは大きな箱形ボディでも、他の楽器に比べれば音量が小さいためソロをとっても聴こえない。つまりバッキング専門の楽器だったのです。しかし、エレクトリック・ギター(+アンプ)のおかげで、大音量でドラムスやサックスに張り合えるソロをとることができるようになったというわけです。
そしてオルガン。正確には「ハモンド・オルガン」ですね。1950年代末のジミー・スミスの登場で一気にジャズ楽器として認識された楽器ですが、このハモンド・オルガンは電気がなければまったく音が出ません。1930年代半ば、ジョン・ハモンドにより発明されたハモンド・オルガンは、オルガンに“似ている”音を出せるため「オルガン」と付いていますが、パイプ・オルガンや足踏みオルガンとはまったく違う楽器です。 エレクトリック・ギターは、電気がなくても生の弦の音は出ていますが、ハモンドは発音機構そのものに電気が必要なのです。“本家”オルガンはリードの振動が音源ですが、ハモンド・オルガンはトーン・ホイールと呼ばれる直径5センチほどの歯車状の部品を電動モーターで回し、その横に付けられている電磁コイルの磁界を変化させて音源信号を発生させます。それを加工し、アンプで増幅して音を出すのです。トーン・ホイールが回っても音は出ません。ハモンド・オルガンにはたくさんの種類がありますが、代表的な「B3モデル」にはトーン・ホイールが91個装着されているそうです。それらの音を組み合わせることにより、さまざまな音を作り出すことができたのです。なお、トーン・ホイール機構のハモンド・オルガンは70年代半ばに生産中止となり、以降は電子的な発音機構に変更されました。
他にジャズ楽器で電気が使われているのは、ヴァイブラフォンの共鳴管ですね。共鳴管の内部上部には、響きをコントロールする板があり、それを電気モーターで回転させることにより、楽器名の語源であるヴィブラート(音のふるえ)を作り出しています。この機構については使わないプレイヤーも多いですけど。
いわゆるモダン・ジャズ時代の電気楽器はこれぐらいだと思いますが、現在のジャズでは生、電気問わずあらゆる楽器が使われています。(向き不向きはありますが)楽器の種類は問わず、何でも受け入れられるのがジャズという音楽のひとつの特徴とも言えますね。