Q116 ID igagurioyajiさんの質問 2014年5月8日
「最初のジャズ」というか、「元祖ジャズ」って誰の音楽?
igagurioyajiさん
いらっしゃいませ。
「元祖ジャズ」というのは、難しいですね。そもそも何をもってジャズとするのか、というのは実に判断が難しいところです。ある日突然に発明されたものではなく、ある音楽が徐々に変化してジャズと呼ばれる音楽になったわけですから。でも、違う観点から「最初のジャズ」とされている音楽はあります。
その観点とは、レコードです。「世界で最初のジャズ・レコード」は、「オリジナル・ディキシーランド・ジャス・バンド(ODJB)」が1917年に録音し、同年に米国ビクターが発売したSP盤『リヴァリー・ステイブル・ブルース』とされています。もちろんレコードは作らずに同じような音楽を演奏していたグループはほかにもあったでしょうし、それ以前に「オレがジャズを作った」と自称するジェリー・ロール・モートンのような人もいますので、ジャズという音楽そのものの成り立ちには諸説あるところです。いずれにせよ、これが現在「定説」となっています。当時のアメリカはレコード再生機である「蓄音機」がブームになっていたということもあって、SP盤『リヴァリー・ステイブル・ブルース』はなんと100万枚超の大ヒットになったそうです。なおODJBの「ジャス」はJASSです。このレコードを出したすぐ後に、バンド名のJASSはJAZZに変えられました(ですから略称は同じ)。このあたりも「元祖」探しには興味深いネタですね。
当時レコードはまだ開発間もないニュー・メディアでした。ODJB以前のジャズ系の音源は多くはありません。それ以前の音楽の記録方法は楽譜しかありませんでしたので、即興を重視するジャズでは、楽譜からそのニュアンスを知ることはなかなかむずかしかったとも想像できます。文字通り「レコード」は「記録」ですから、このレコードの発明でジャズは広く流通し、多くの人に知られるところとなりました。この音源は現在もCDで聴くことができます。「記録」は重要なんですね。
ODJBはコルネット、クラリネット、トロンボーンの3管がフロントですが、現在のジャズの主力楽器であるサックスはまだ使われていない時代でした。また、明確なアドリブ・ソロではなく集団即興を主体にしたODJBの音楽は、今の耳で聴くとジャズとしてはのどかな感じもしますが、当時としてはきっと斬新なものだったのでしょう。それから約100年が経ちましたが、ジャズはとても大きく変わってきました。ジャズはスタイルが定義するものではなく、その定義すら「変わっていく音楽」なのでしょう。