Q88 ID noritake556さんの質問 2012年1月6日
アナログ・レコード(LP)の魅力ってなんでしょうか? 聴いたことないんですが。
noritake556さん
いらっしゃいませ。
私マスターの世代ですとジャズ聴き始めた頃はLPしかなくて、それが当たり前でしたがもうLPじゃないのが当たり前ですよね。CDが標準的な音楽メディアになってからもう20年以上になりますからね。1980年代半ばに、今思えば信じられないくらい短期間で変わってしまいました。当時「最後のLP」とうたったLPが何社からも出て、ついにメディアの世代交代の時期が来たのかと、半ばあきらめてCDプレイヤーを買ったという記憶があります。だってCDしか出ないんですからね。それから四半世紀(!)、さすがに新録新譜LPはほとんどありませんが、「最後」になることはありませんでしたし、プレイヤーの製造も少なくなったとはいえ、まだたくさん売ってます。専門の雑誌もあったりと、やっぱり大きな魅力があるということでしょう。では、いろんな観点からLPレコードの魅力を探ってみましょう。
まず「音」。CDは高音質をうたって発売されたんだけど、音質はスペックだけでは単純に比較ができないところがあるんですよね。CDには人間の可聴範囲外といわれる約22kHz以上の高音域は収録されていないけれども、LPはもっと高い音域まで収録・再生が理論的には可能です。このあたりは耳では聴こえなくても、「感じて」いるともいわれています。じゃあやっぱりLPの方がいい音なのかというと、単に広帯域再生ができることが「質」の良し悪しではないので(例えばノイズや歪み)、「音質」は一概にどちらがいいとはいえないものです。でも違いはあるから、これは好み、かなあ。でも、CDにはないLPの音についての特徴がひとつあります。CDプレイヤーの音質を自分の好みに変えることはなかなかできませんが(オーディオマニアならケーブルやDAコンバータを変えるという方法もありますが、一般的ではないのでここでは触れません)、アナログLPだとピックアップ(アームの先っぽの、針がついているあの部品です)が簡単に交換でき、これでおもしろいように音が変わりますから、アナログの方が「いじる」楽しみは多いと言えましょう。
そしてジャケット。CDのタテヨコ12センチのジャケットと、LPのタテヨコ31センチの魅力の違いは明らか。説明するまでもありませんね。復刻CDはもとのLPジャケットの「ミニチュア」ですが、もともとあの大きなサイズのためにデザインされたものですから、小さくしては魅力は半減です。しかもプラスチックのケースに入っているのは、どうも「大量生産品」のイメージがあっておもしろくない。「聴ければいい」みたいで。もちろんCDジャケットにも魅力的なものはたくさんありますし、LPでも質の悪いものもある。でも復刻「紙ジャケ」が人気なのを見ても、やはりLPジャケットの手触りには魅力があるからなのでしょう。「でかジャケCD」というのもあったなあ。つまり、LPには音楽再生メディアというだけでなく、「ブツ(物)」として「所有する喜び」があるということ。やっぱりこのあたりが最大の魅力ではないでしょうか。
LPはキズやホコリに弱いから取扱いはめんどうだし、大きくて重くて場所もとるし(=これを改善したから「コンパクト・ディスク」なのね)、といった、CDに比べたデメリットこそが、今ではLPの最大の魅力というのもおもしろいですよね。まあ、まずは1枚、ピンときたジャケットのものを中古屋さんで買って、聴けなくてもいいからじっくり眺めてみてください。写真やデザインだけでも楽しめるものがたくさんあると思います。優れたアーティストが手がけたジャケットはそれだけで「作品」です。ぜひオリジナルのサイズで見るべし。
余談ですが、ジョン・コルトレーンの諸作で知られるインパルス・レーベルのLPは背中が魅力。基本は見開きジャケットだから背表紙は厚くて、上半分はオレンジで下半分が黒のツートーン。これがレコード棚にズラリと並ぶとかっこいいんだなあ。どんどんコレクションしたくなりますよ。