Q83 ID dragongさんの質問 2011年8月1日
毎日暑いですね。暑さは熱さで制す、ってことで「熱いジャズ」を教えてください。ただし4ビート限定、有名盤除く(新しい刺激が欲しいんです)でお願いします。
dragongさん
いらっしゃいませ。
暑い夏は熱いジャズ、わかるなあ、その気持ち。では思いつくままですが、熱いやつをご紹介しましょう。イメージとしては、スタートからゴールまで全力疾走、演奏後はスタジオの気温も上がったに違いないって感じのものね。
まずは『Super Trios/マッコイ・タイナー』はどうでしょうか。マッコイ・タイナー(ピアノ)とロン・カーター(ベース)、トニー・ウィリアムス(ドラムス)のトリオ編成。3人並んだだけでも熱い感じがしますが、この中の「モーメンツ・ノーティス」が特に熱い。最初から最後まで、ほとんどドラム・ソロ状態で叩きまくるトニーと、それに負けじと弾きまくるマッコイの激突はまさに格闘技。終わった後、ピアノは大丈夫だったかしらん。ちなみにアルバムは「トリオズ」なので、エディ・ゴメス(ベース)とジャック・ディジョネット(ドラムス)というもう1組のトリオも収録されていますが、そちらはちょっとクールかな。
次は『The Birthday Concert/ジャコ・パストリアス』。この中の「インヴィテーション」がすごい。ジャコ・パストリアス(ベース)が弾きまくるバッキングに乗った、マイケル・ブレッカー(テナー・サックス)の吹きっぷりは尋常じゃない。誰かが止めないと倒れるまで吹き続けるんじゃないかというほどの勢い。ブレッカーは吹きまくってても割と醒めてる感じの演奏も多いですが、ここでは演奏に没頭しているように聴こえますね。ジャコの煽りに刺激されてるのかな。
『Trio Of Doom』は、先の2枚の熱さの発生源であるトニー・ウィリアムスとジャコ・パストリアスに、ジョン・マクラフリン(ギター)によるトリオ。「ダーク・プリンス(ライヴ・ヴァージョン)」で熱くなってください。イントロのトニーのシンバルだけでもうかなりきてますが、テーマの途中からジャコがアップテンポの4ビート・ベース・ランニングに入ると一気に温度が上がる。そんなふたりに煽られたマクラフリンがクールでいられるわけがなく大爆発。歯止めなく全員が疾走する様は熱いのを通り越して、ちょっと恐くなって冷たい汗まで出そう。
で、質問は有名盤除くとなってましたので、変わったところで1枚。ジャズとしては無名盤の『はじめてのやのあきこ/矢野顕子』なんですけど、「そこのアイロンに告ぐ」をどうぞ。この曲は、矢野顕子(ヴォーカルとピアノ)と上原ひろみ(ピアノ)のデュオなんです。ピアノ2台の伴奏に乗って1コーラス矢野が歌って、続いて上原のソロになるんだけど、これが熱い。すごい勢いで弾き始め、途中からは左手が4ビートでランニングしてさらにぐいぐいと盛り上がっていくのね。こういうアルバムがジャズ・コーナーに置いてないのはもったいないな(これ以外の曲はジャズじゃないけどね)。
以上、マスターの趣味がかなり全面に出てしまいましたが、どれも熱くなれること間違いなし。暑さを熱さで制するってのは節電にもなるんだな…。

1.『Super Trios/マッコイ・タイナー』(Milestone)

2.『The Birthday Concert/ジャコ・パストリアス』(Warner Bros.)

3.『Trio Of Doom』(Sony)

4.『はじめてのやのあきこ/矢野顕子』(ヤマハ)