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Dear Jazz master 教えてマスター

Q63. ID: Mobius1さんからの質問
私は速いテンポの演奏が大好きです。前回のこのコーナー(Q62)で、「ドナ・リー」という曲は「上手い人はより速く演奏するようになった」と紹介されていましたが、一番速いのってどれぐらいなのですか? 人間の限界(笑)に挑戦しているようなものってありますか?

Mobius1さん、いらっしゃいませ。
前回のこのコーナーで紹介している「ドナ・リー」という曲(チャーリー・パーカー作曲)は、どんどん速く演奏されるようになりましたが、確かに人間が演奏する以上、限界はあるでしょうね。では今回は「ドナ・リー」を中心に、「速い演奏」を紹介していきましょう。

 

まず「ドナ・リー」ですが、オリジナル・ヴァージョンはチャーリー・パーカー(アルト・サックス)の1947年録音、アルバムでは『On Savoy』(Savoy)に収録されています。実はこれはすごく速いという演奏ではありません(1コーラス34秒ぐらい/四分音符=約220)。何でどんどん速く演奏されるようになったかと考えると、そもそもメロディを演奏するのが難しいということで、それを速く演奏することは「実力の証明」になるからでしょう。もちろんジャズですから、そのスピードでアドリブも(もちろんテーマと同じく、8分音符で乗って)こなさなければなりません。実はこっちの方が難しいわけで、つまりアドリブの実力もなければならないというわけです。テーマのメロディを演奏するだけではおもしろさは3割(?)というところでしょうか。

 

では、いきなり「ドナ・リー」の(たぶん)最速ヴァージョンを。アルト・サックスのリッチー・コールが、師匠であるフィル・ウッズを招いてのライヴで、収録アルバムは『Side By Side』(Muse)。これは速い。ふたりともチャーリー・パーカー直系と言われるスタイル(ビ・バップ)で、ブリブリに吹きまくりますが、1コーラスがわずか20秒ほどで通り過ぎてしまうというすごいテンポ。「ドナ・リー」は1コーラス32小節ですから、1秒間に6拍ぐらいの換算でしょうか。とにかく速さ最優先でやってみましたという感じで、ちょっとあぶないところもあったりするんで名演とは言いにくいところではありますが、びっくりしますよ、これは。

 

では、文句なしに速くてしかも上手い演奏を。これから紹介する3ヴァージョンはテンポはどれも同じぐらい。やっぱりこれぐらいが内容を伴える速さなのかな。コールたちより遅いけど、それでも1コーラス24秒ぐらいだからすごく速い。

 

クリフォード・ブラウン(トランペット)の『The Beginning And The End』(Sony)。これはレコーディング前提ではないジャム・セッションの記録なのね。にもかかわらず歌心あふれるすばらしいアドリブに圧倒されること間違いなし。まさに天才だ。そしてウィントン・マルサリス(トランペット)の、こちらもライヴ盤『Live At The House Of Tribes』(Blue Note)。ブラウンの演奏を意識していないはずはないと思うけど、こちらも天才。余裕たっぷりであっけにとられますね。渡辺貞夫(アルト・サックス)の『バード・オブ・パラダイス』(ビクターエンタテインメント)のヴァージョンも速くて内容もすばらしい。ここでの注目はドラムスのトニー・ウィリアムス。とにかく最初から最後まで渡辺貞夫をビシビシ煽り続けているのね。テンポも速いんだけど、ガンガン加速していくように感じさせるスピード「感」がすばらしい。

 

「ドナ・リー」の他にも「速く演奏する」曲としては、「チェロキー」がありますね。1930年代末にレイ・ノーブル楽団がヒットさせたという曲ですが、テーマのメロディは長い音符のゆったりしたものなので、テンポを速くしてもテーマの演奏は「ドナ・リー」のように難しくない。でもその分、超高速アドリブで勝負をかけるというのが暗黙の了解事項(?)になっています。

 

きっかけになったのは、こちらもチャーリー・パーカー。パーカーは「チェロキー」のコード進行を借用して「ココ」という曲を作り、猛烈なスピードで演奏しました(「ドナ・リー」も「インディアナ」のコードを借用した曲でしたね。こちらも『On Savoy』に収録)。まあ、パーカーの時代はいわゆるビ・バップ創世記で、ビ・バップは「それまでにはなかった速さ」も特徴のひとつなので、速い演奏が多いんです。ただ「ドナ・リー」と違い、多くのジャズマンは「ココ」ではなく「チェロキー」を演奏しています。そっちの方がいいメロディってことかな。で、ビ・バップ時代(1940年代半ば)以降は、ゆっくりやっている人の方が少ないぐらいに「速い曲」として定着しました。これもクリフォード・ブラウン、バド・パウェル(ピアノ)、ソニー・ロリンズ(テナー・サックス)、(またしても)ウィントン・マルサリスなどなど、多くのすばらしい演奏が残されています。どれも速いです。

 

そんな中でもぶっ飛んで速いのが、ピアニスト、ヨアヒム・キューンの『Surviver』に入っているヴァージョン。マイケル・ブレッカー(テナー・サックス)がものすごい勢いで吹きまくり、エディ・ゴメスは人間技とは思えない4ビート・ベース・ランニングで突っ走る。聴いているこっちも息つぎが出来ないくらい。高速マニア(?)も納得の、マスターがこれまで聴いた中で最も速いテンポの演奏のひとつですね。これホントに限界(笑)って感じで、終るとホッとするという珍しいタイプの演奏です。

 

聴いてたら息切れしてきたので、次は最も遅いテンポの演奏を紹介しましょう(笑。リクエストがあれば、ね)。
ではまた。


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