izumiffyさん、いらっしゃいませ。
パーティやイベントのBGMを考えるのはとても楽しいよね。でも、慎重に。BGMは無意識のうちに場の雰囲気をつくってしまうのだから、演出としてはとても重要なものです。まして結婚式なんて、当人たちにとっては人生の大舞台。これがきっかけでその後の人生が変わる...なんてことはないでしょうけど、ビデオに撮ればBGMはサウンドトラックになるわけですから、失敗しないに越したことはないでしょう。
まあ、選曲はセンスですから、どんなものでもアリだと思いますが、結婚式の場合に気をつけたいことがひとつあります。それは歌詞です。ジャズ演奏の多くはインスト(インストゥルメンタル:歌詞なし)ですが、曲にはもともと歌詞がついているものが多いから、結婚式では失恋の歌などは避けるべきでしょう。さすがに「レフト・アローン」ならタイトルからしてまずいとすぐわかりますけど、有名スタンダードの多くは、もともとミュージカルや映画音楽だったりするから、「恋人よ我に帰れ」のように(これもタイトルでNGですが)、失恋ソングなのにメロディーが明るいものもいっぱいあるのです。
例えば、ビル・エヴァンスの演奏がよく知られる「スプリング・イズ・ヒア」(オリジナルはミュージカル)は、タイトルからすると恋愛ソングのようだし、メロディも暗くないけど、これは実は「春が来た」ではなく「春が来たのに...」という失恋ソングなのです。
また、デューク・エリントンとビリー・ストレイホーン作曲の「サテン・ドール」は、もともとインストで、歌詞は後にジョニー・マーサーがつけたものですが、これ、サテンの人形のことじゃないんです。歌詞の内容はプレイボーイとプレイガールの駆け引きとも解釈でききるものなので、ちょっとまずいかも。
歌詞だけじゃなくて、そのバックグラウンドまで視点を広げてみると、こんな例もあります。多くの名演・名唱があるコール・ポーターの名曲「ナイト・アンド・デイ」は熱烈な恋愛ものですが、もともとは1932年のミュージカル『陽気な離婚』のために書かれたもの。ミュージカルのストーリーは、離婚を控えた女性の恋を描いたものということだから、状況によっては気をつけた方がいいかな(ここまでの深読みは考え過ぎか...)。
というわけで、お勧め曲を紹介するつもりが、結局要注意歌詞の紹介になってしまいました。ふだん聴いてるときは、インストでは歌詞の存在はあまり意識しないとは思いますが、知っている人は知っているということで。まあ、これを逆手にとって「わかる人にはわかる」ストーリーを組立てるというのもおもしろいかも。例えばそのカップルの結婚が突然のことだったら「シークレット・ラヴ」とか、新郎が非イケメンであれば「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」とかね(これって、ちょっとおかしなアナタでも好きという歌なんですよ。「イッツ・オールライト・ウィズ・ミー」も同様の歌詞)。
こんなふうに歌詞の意味を知ると、インストの聞こえ方も違ってくるかもしれませんね。歌詞の重要性を指摘するミュージシャンがいる一方、「曲」はあくまで「曲」という演奏も多いですから、受取る側だけの問題かもしれませんが...。