Trinityさん、いらっしゃいませ。
よくあることじゃないけど、こういうものはあります。この『ソニー・クラーク・トリオ』は2種類あり、ひとつは「ブルーノート」レーベルから、もう一方は「タイム」レーベルから出たものです。前者は1957年、後者は1959年の録音で、メンバーも曲も違うまったく別のアルバムです。どちらも日本では人気があって、すっかり「定番」アルバムになっています。「タイム」の方はちょっと前にビクターから初登場ボーナス・トラック付きヴァージョンが出たばかりですね。
どうして同じ名前になったのかはわかりませんが、今でこそよく知られる2枚でも当時はどちらもマイナーだったことと、タイトルはミュージシャン本人がつけたのではないということが推測されます。説明するときは必ずレーベル名をアタマに付けることになりますので、いっそのこと国内盤カタログ上だけでも何か別のタイトルを付ければいいのでは、なんて思ったりしますが、もうすっかり定着していますからね。
他の例としては、『ジャッキー・マクリーン・クインテット』が1955年(アドリブ/ジュビリー)と1962年(ブルーノート)録音の2枚があります。55年盤は国内盤タイトルのアタマに「ザ・」がついているけど、それもジャケットが2種類あって、つまり(ほぼ)同じ名前で3種類あるのです(いずれもEMIミュージック)。これも有名なので知っておくにこしたことはないですね。実際、解説が混同しているCD通販サイトがあったりするので要注意です。
これらの場合、同じタイトルの別のアルバムがあることを知っていればいいわけですが、めんどうなことに、同じアルバムなのに内容が違うのものがあったりします。もしお友達と話が噛み合なかったら、そういうところも確認した方がいいかも。
例えば、何度も再発されているマイルス・デイヴィスの人気ライヴ盤『ブラック・ホークのマイルス・デイヴィス第1集・第2集』(ソニーレコード)なんだけど、今手元にある発売年が違う2枚の『第2集』CDを比べてみると、タイトルはもちろん、収録曲も同じなのに収録時間がまるで違う。ひとつは58分13秒、もう一方は72分55秒なのね。25パーセント増量。これは短い方(古い発売)は、演奏が編集、つまりカットされていたから。曲によっては2/3ぐらいになっていたものもある。いや、これは逆ですね。後で1.5倍になったと言うべきか。出番が少ないと思っていたテナー・サックスのハンク・モブレーが実はバリバリに大活躍してたわけです。前のを知っていたから聴いてびっくりだったんだけど、多くの人は2枚は持たないから違いはわかりようもない。そしてそれは解説には書いてないのね。まあ、帯(だけ)に小さく書いてあるのに後で気がついたんだけど。今では未発表曲も未編集で集めたCD4枚組『コンプリート』ヴァージョンも出ているので、LP時代に聴いた人と今初めて聴く人の印象はずいぶん違ってくるのではないかな。
もうひとつ。チック・コリアの出世作『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』だけど、これ海外盤も入れるとCDは3種類あります。ひとつはオリジナルLPと同じ5曲収録のもの。あとのふたつはともに13曲なんだけど、曲順が全然違う。1曲目が違って曲数も倍以上なので、どれを選ぶかでアルバムの印象はかなり違ってくるよね。さすがにそのことは解説には書いてあるけど、タイトルもジャケットも同じなんだよね(国内盤はEMIミュージック)。
これらは実はほんの一例。あなたの聴いているあの名盤と、友達が聴いているあの名盤は同じかと思ったら実は違うこともあるって話。えっ、ダウンロードで1曲ずつ買うからアルバムは関係ない? うーん、問題はますます複雑化していくね。