Q4. ID:kimukimuさんの質問 2007年1月15日
ジャズ初心者です。ピアノレス・カルテット(トランペット、テナー・サックスの2管フロント)のアルバムで何かお勧めはありますか。ダークでスリリングな感じが好みです。
kimukimuさん
いらっしゃいませ。
「2管」で「ピアノレス」ね。はい、いいのあります。お連れの方はジャズ好き? それほどでもない? じゃあ「ピアノレス・カルテット」から説明するよ。まず、「カルテット」というのは4人編成のこと。 4人といってもジャズの場合、ピアノ、ベース、ドラムスと「もう1人」という編成のことを指すことがほとんど。 「もう1人」というところには、トランペットやサックスなどの管楽器や、ギターが入ります。
今日は「ピアノレス」で「トランペット、テナー・サックスの2管フロント」がリクエストだから、 「トランペット」「テナー・サックス」と残りは「ベース」と「ドラムス」の4人編成のこと。 「ピアノレス・カルテット」の特徴は和音(コード)を出す楽器がないことだね。 そして「フロント」という表現は前に立つ人、つまりソロをとる人のことで、それがトランペットとテナー・サックスだね。 はい、コーヒーどうぞ。
バンドはピアノなどの和音(コード)があるのが基本なのね。音楽の3要素のひとつ「ハーモニー」を受け持つピアノを外して、わざわざ伴奏をスカスカにする理由はどこにあるかというと、「自由な」ソロを演奏するため。ピアノを「足かせ」と考えたんだね。でもこれは実はたいへん難しい。本来ピアノは「土台」だからね。
ピアノレスで、まず有名なのは50年代前半のジェリー・マリガンのカルテット。トランペットとバリトン・サックスのからみが聴かせどころだった。そして50年代後半のオーネット・コールマン・カルテット。フロントはオーネットのアルト・サックスとドン・チェリーのトランペット。「フリー・ジャズ」で知られるオーネットは、まさに「足かせ」を取っ払って自由になった。「ピアノレス」はこのふたつの流れがあるけど、サウンドはまるで違う。質問のダークでスリリングなサウンドなら後者の方だね。
トランペットとテナー・サックスの編成なら、お薦めはジョン・コルトレーン(テナー・サックス)の『アヴァンギャルド』。これはコルトレーンが、そのオーネットのグループを借りたもの。フロントはコルトレーンとドン・チェリー。タイトルは凄そうだけど、まさにダークでスリリングな4ビート・ジャズです。ソニー・ロリンズ(テナー・サックス)もドン・チェリーとピアノレス・カルテットでアルバム『アワ・マン・イン・ジャズ』を作っている。でもロリンズはピアノレス・トリオ『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』の方が有名だ。どちらも自由奔放に吹きまくっているね。
ところでkimukimuさん、初心者なんて謙遜し過ぎですよ。トランペットとテナー・サックスのピアノレス・カルテットのアルバムは少ないことを知っているんでしょ? もっと話そうよ。コーヒーおかわりどうです?

『アヴァンギャルド/ジョン・コルトレーン』
(イーストウエスト・ジャパン)

『アワ・マン・イン・ジャズ/ソニー・ロリンズ』
(BMGジャパン)

『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜/ソニー・ロリンズ』
(東芝EMI)