
ジョン・コルトレーンの名曲(6)
『アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー(I Want To Talk About You)』
甘いバラッドもコルトレーンが演奏すると…
これはコルトレーンの作曲ではありませんが、コルトレーンの作曲に思えるほど彼にぴったりの曲想、演奏なのでご紹介。1958年録音の『ソウルトレーン』がコルトレーンの初演です。オリジナルはビリー・エクスタインが40年代に書いた甘いバラッドですが、コルトレーンは力強く気持ちを込めて演奏しています。コルトレーンはのちにその名も『バラッズ(バラード)』というアルバムを作りますが(61年録音)、そこで確立されるコルトレーンの特徴のひとつ「ハードボイルドなバラッド」の萌芽がここにあります。甘く語るのではなく、はっきりと朗々と物語を語るようなプレイはコルトレーンの大きな特徴のひとつです。堂々としたサックスの、深みのある音色もたまらないですね。この音色だけでもうコルトレーン。ほかの誰とも違うこの音色なら、何をやっていてもコルトレーンの世界になっているというのはけっして言い過ぎではないと思いますがどうでしょうか。
エンディングの長いカデンツァ(無伴奏の自由なアドリブ)がこの曲のもうひとつの聴かせどころ。『ソウルトレーン』でもバリバリ吹きまくっていますが、その後も愛奏していたのでしょう、63年のライヴ盤『ライヴ・アット・バードランド』はもっと強烈に、すごい勢いでドラマチックなクライマックスを作り出しています。レコードを聴きながら思わず拍手をしてしまいますね。
写真3:ジョン・コルトレーン『Live At Birdland』(Impulse)