
ジョン・コルトレーンの名曲(4)
『ブルー・トレイン(Blue Train)』
テーマはバンドで合奏するもの
コルトレーンは、たくさんのアルバムをリリースしているため、長く活動しているようにも思えますが、1950年代半ばにマイルス・デイヴィスのバンドに参加、60年初頭に独立、67年に突然の死という歴史をみると、自身の音楽を追求する活動は10年に満たないんですね。にもかかわらず、その作品は変化の連続。その10年の最初と最後ではまるで別人といってもいいくらいですが、作品を順序立てて聴いてみると、その変化と進歩はきっちりと連続し、またその時々の「狙い」もはっきりとしており、しっかりとステップアップしていったことがわかります。
「ブルー・トレイン」は1957年録音の同名のアルバムに収録されたブルース。シンプルなフレイズを繰り返す曲ですが、ここにも狙いがはっきりとみてとれます。それは「アンサンブル」あるいは「バンドとしての表現」。テーマ・メロディをハモり、またそれに対してバンド全体で「合いの手」を入れるアレンジが実に印象的ですね。アドリブをとるためだけのブルースなら、テーマはひとりでさらりと流していても手抜きにはならないですが、どうせやるならバンド全体で表現することを考えたというところでしょう。1940年代半ばの「ビ・バップ」の時代にはこういう発想は希薄でした。でもコルトレーンの時代には、ジャズはもうアドリブ「だけ」の音楽ではなくなっていました。アドリブはもちろん重要ですが、それとともにバンド全体での表現も重視すること。これが「ハード・バップ」と呼ばれるスタイルです。つまりこの曲は「コルトレーン流ハード・バップ」ということ。テーマだけでもかっこいいですよね。
なお収録アルバム『ブルー・トレイン』は収録全5曲中4曲がコルトレーンのオリジナル。いずれもこの曲同様に、「バンド」を念頭において書かれたものと思われます。惰性のセッション・アルバムとは明らかに違うテイストを感じます。聴かせどころが明確であることも人気盤の条件のひとつといえましょう。
写真1:ジョン・コルトレーン『Blue Train』(Blue Note)