
ジョン・コルトレーンの名曲(2)
『ナイーマ(Naima)』
美しいバラッドもコルトレーン
コルトレーンは「ジャイアント・ステップス」のような音楽理論研究の成果として作った曲やアレンジをいくつも録音していますが、その一方、やっぱり「美しいメロディ」というのはあるわけで、アルバム『ジャイアント・ステップス』では、おだやかな静かな雰囲気に、ぐっとくる美しいメロディのバラッド「ナイーマ」もやっています。「ナイーマ」はコルトレーンの当時の妻の名前。こちらも音楽理論的な仕掛けは含まれているものの、歌心を感じるすばらしい演奏になっています。ほかのアルバム収録曲は激しい曲が多いので、美しさもひときわ際立って感じられますね。緩急自在。うまいなあ。コルトレーンはのちにその名も『バラッド』というバラッド集をリリースしますが、そちらのファンの方はこの「ナイーマ」もぜひ聴いてみてください。
ついでにいうと、後にコルトレーンはナイーマと離婚し、バンドのピアニストであるアリス・マクロードと結婚します。そしてコルトレーンはアルバム『ヴィレッジ・ヴァンガード・アゲイン』でアリスとともに「ナイーマ」を演奏していますが(1966年録音)、この時はいわゆるフリー・ジャズのスタイルです。ここでの「ナイーマ」は冒頭のメロディこそあれ、アドリブが始まるともう混沌の世界に突入し、同じ曲でももうまったく別の姿をみせます。音楽のスタイルも人の心も変わるものですね。まずはオリジナルの『ジャイアント・ステップス』収録ヴァージョンを聴いてみてください。
写真2:ジョン・コルトレーン『Giant Steps』(Atlantic)